そして、そうした暗黙のベースのうえでの議論を3日ほど聞かされて母国に帰った参加者たちは、口々にこう言うことになるのである。――「ロシアへの投資を考えよう。ロシアはこれからまだ伸びる」。
中国の術中に、いとも簡単にはまる参加者たち
ロシア以上にこうした国際的な「経済論陣」が持つ意味合いを十二分に意識しているのが中国だ。非常に面白いことにたいていの場合、中国はこの手の国際会議には、美人で見るからに聡明そうなアナリストを送り込む。あるいは男性であれば、いかにも「教授」といった感じの信頼感の持てるタイプの人物である。中国というとひと頃までは皆「人民服」で一緒といったイメージであったが、今はむろん、まったく違う。前者の女性アナリストはたいていの場合、明らかに高価なブランド物でミニスカートのスーツを身にまとっており、後者の男性「教授」も垢抜けた格好をしている。
だが彼ら、彼女らは、議場で一度口を開いた途端に豹変するのである。ノンネイティヴのアクセントではあるが、マシンガンのようなスピードで英語を話し始めるのだ。しかもたいへん興味深いのがその「論調」であって、非常に巧みなことに、必ずしも中国がその時点で取っている経済政策について120%賛成といった議論は一切しないのである。むしろ率直に「中国は影の銀行(シャドーバンキング)の問題に悩んでいる」といった形で中国自体の政治・経済が抱える問題を指摘する。そのため、聞く者たちは至極納得といった感じになるのであるが、実はそれによって完全にその術中にはまってしまうのである。
今回のサンクト・ペテルブルクにおける会議でもそうであった。中国から大挙してやってきた彼ら、彼女らは口々に「中国経済で最大の問題は国有企業だ。この国有企業を完全に民営化させ、中小企業がもっと活発に経済活動ができるようなシステムにしなければダメだ」と叫んでいた。たとえばそうした様子を目の当たりにすると、勘のいい聴衆はこう思ってしまうのである。「なるほど、国有企業を完全に民営化するという意味での構造改革を中国から推し進めるということなのだな。しかも中小企業を振興していくということは、新規株式上場(IPO)も推進していくということなのではないだろうか。まだまだ中国マーケットには未来がある。よく語られている悲観論は、まったくもってデタラメだ」
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