10月26日に、自民党の財政再建に関する特命委員会(委員長・茂木敏充政調会長)の下に設けられた2020年以降の経済財政構想小委員会(小泉進次郎小委員長代理、村井英樹事務局長)は、「人生100年時代の社会保障へ」と題した提言を発表した。この小委員会については、東洋経済オンラインの本連載の拙稿「厚生労働省を分割するメリットとデメリット」でも触れたことがある。
提言「人生100年時代の社会保障へ」は、小委員会の名称にも表れているように、社会保障の将来像を打ち出したものであり、自民党として党議決定したものではない。とはいえ、目下議論中の社会保障の改革項目が向かっている将来像へ導く「羅針盤」として、この提言を読むと、わが国の社会保障の見通しが開けてくる。
今月に入り、年金、医療、介護と、わが国の社会保障制度の根幹をなす仕組みに関して、国会や政府部内でさらに活発に議論されている。
今の議論の先に社会保障の将来像がある
現在開会中の臨時国会では、年金受給に必要な保険料支払期間を25年から10年に短縮することを盛り込んだ年金機能強化法改正案は、与野党一致で可決する見通しが立った。しかし、本連載の「年金『世代間の公平』をめぐる与野党の攻防」で述べた年金制度改革関連法案は、成立の目途がまだ立っていない。
他方、医療と介護は、来年度予算編成や来年の通常国会への法案提出をにらみ、専門的な検討が続いている。表舞台では社会保障審議会や財政制度等審議会などでの有識者による議論があり、それと並行して水面下では厚生労働省と財務省との間で折衝が進められている。
医療で焦点となっているのは、70歳以上高所得者の自己負担額の上限の引上げ、75歳以上の高齢者に対する保険料軽減の特例廃止、高額薬剤オプジーボの薬価の臨時値下げ、薬局で買える医薬品(市販品類似薬)が医療機関で処方されたときの自己負担の引き上げ、かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入などである。
介護では、介護サービスの自己負担額の上限の引き上げ、通常1割の自己負担を2割にする高所得者の対象拡大、勤労世代が負担する介護保険料を所得に応じて保険料を負担する「総報酬割」の導入、要介護度の低い人向けサービスの範囲の縮小などである。
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