進次郎氏らが掲げる社会保障の将来像を読む 「人生100年時代」へ改革はすでに始まった

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ただ、受給開始年齢を柔軟化した「人生100年型年金」にたどり着くには、それだけでは足らない。特に重要になるのは、高齢者の就労インセンティブの拡大をセットにした支給開始年齢(受給開始の標準年齢)の引き上げである。

長寿化で、より長く働く高齢者が珍しくなくなり、65歳を支給開始年齢とする必然性が低下する。しかし、短絡的に支給開始年齢を引き上げては、老後の生活設計ができない。どのように引き上げるか、長い時間をかけて議論する必要がある。この提言にある、支給開始年齢の引き上げについての議論を直ちに開始すべきとの主張は、的を射ている。将来の支給開始年齢の引き上げは、今の高齢者が口出しするものではなく、団塊ジュニア世代より若い世代が我が事として考えるものだ。

「健康ゴールド免許」に見るリスク分担の発想

「健康ゴールド免許」の発想の背景には、医療や介護では、小さなリスクは自己負担で、大きなリスクは公的保険でカバーするという意図が読み取れる。国民皆保険制度は当然維持すべきだが、小さなリスクも大きなリスクもすべてカバーしようとすれば、とてつもない負担が国民にのしかかる。

国民が、際限なき負担増に喘ぐことがないようにするには、大きなリスクに直面したときに重い負担を課されないようにすることが重要だ。大きなリスク、つまり多額の医療費や介護費がかかる場合には負担が重くならないよう保険給付を出す必要がある。

他方、自助努力で防げる小さなリスクは、予防に努めて回避するとともに、リスクに直面しても少額の負担で済むため、家計に大きな打撃を与えることはない。ただ、それだけでは、低所得者の負担が重くなってしまうから、負担能力のある人には年齢を問わず財源負担を多くお願いしなければ、医療や介護の保険財政は維持できない。

こうみると、市販品類似薬が医療機関で処方されたときの自己負担の引き上げや、要介護度の低い人向けサービスの範囲の縮小などは、小さなリスクは自己負担とする方向と軌を一にしているとみることができよう。70歳以上高所得者の自己負担額の上限の引き上げ、介護サービスの自己負担額の上限の引き上げ、通常1割の自己負担を2割にする高所得者の対象拡大は、負担能力のある人には年齢を問わず多く負担をお願いすることと整合的である。

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