「モヤさま」の「ユルくてマジメ」な舞台裏 伊藤隆行プロデューサーに聞く

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鼻水がでただけでも企画になる

――どのようなところから企画は生まれるのですか。

企画そのものは、冗談のようなものです。笑っちゃったことでも、泣いたことでもいいんですが、たぶん、日常のあらゆることが、全部企画書になります。たとえば、僕個人の経験だと、上司だった人と真面目な話をしているときに、その人が急にくしゃみをして、立派な鼻水がぴゅーと出たんです。「どうするかな?」と思っていたら、その人はそのまましゃべり続けたのです。

こういう冗談みたいなことでも、番組になるなと思ったんです。どっきり番組ではないですけど、そういうときに人はどうするだろうと。そこからスタートして、「大げさにやったほうがいいのか」「地味にやったほうがいいのか」「スタジオ、ロケ、どれがいいのか」を考えます。このアイデアが企画書として成立するか、本当に面白いかは、そんなに深くは考えません。

結局、企画は個人のものだから、勝手に自分のイメージ――こんな感じで、こんな人がやっていたら面白いだろうな――をどんどん投影していく。「こういうことをやりたい」「ここが面白いからこうしたい」という個人の強い思いが企画の根本には必要だと思います。

ただ、実際に、企画が成立しそうだとなったら、今度はいろいろな人の意見を聞きます。たとえば、「僕はこういう人をMCにしようと思うんだけど、どうかな」と聞いてみて、「ちょっと違うんじゃないすか」と言われたら、「どうしようかな」とすぐ悩む。一生懸命悩む。違う意見をいっぱい言ってくれそうな人を番組の立ち上げのときに選びます。ただ、完全に孤立するのは嫌なので(笑)、言うことを聞いてくれる人も入れますが、重要なところに「対岸の意見を言ってくれる人」を置くようにしています。

――今まで企画は何勝何敗ですか。

いっぱい負けてますね。企画書だけでいうと、この間、引き出しを見たら、1000近くありました。そのうちの920~930は通っていないですね。番組も、たくさん立ち上げる一方で、いっぱい終わらせています。感覚的には10個やって1~2個残っている感じですかね。会社には甘えさせてもらっています。

スタンスとしては、思いっ切りバットを振って、納得したい。ただ、その場合、大コケもしますけど(笑)。結局、僕は「納得性」が大事だと思っています。視聴率を取るために、視聴者が欲しいものを提供するだけでなく、制作側が本当に「面白いと納得いくこと」が重要だと思っています。

(撮影:吉野 純治)

林 智之 ライター
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