「モヤさま」の「ユルくてマジメ」な舞台裏

伊藤隆行プロデューサーに聞く

長く続けるチームに必要な「うざい」こと

テレビ番組は、想像する以上に「チーム」であり、「組織」である。あるテレビ番組では、技術さん、美術さんなどすべてを入れると100人近いスタッフがいたりするという。だからこそ、伊藤氏は「テレビのプロデューサーはモノを創る才能よりも、ちゃんと関係者の意見を吸い上げること、その感受性を持てることの方がずっと重要です。(中略)人を活かす天才を目指す必要はある」(『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』)と言っています。
そのために伊藤氏が取る手段は、プロデューサーでも実際に現場へ足を運び、”ベタなこと”をしてコミュニケーションを図ることだという。

――チーム作りはどのようにしていますか。

スタッフは誰を選ぶか――ということは、あまり真剣にやっていません。一定のペースで変わったほうがいい場合もありますし。もちろん中心的な人間はしっかり決めて、長くやってもらいますが、ADさんの世代を変えてみたりしています。優秀である必要はありません。「いい子」であるかどうか。街の人に接するときに丁寧にお礼を言える子だったり、話していて素直で失礼でないかとかですね。

――スタッフとも仲良くやっている、とか。

そうですね。「モヤさま」の場合、ロケ中は暇なのです。さまぁ~ずと大江アナや狩野アナが頑張ってくれているので。ADさんとかマネジャーとかカメラマンとかに「ひざかっくん」とかベタなことをして、“うざい”くらいにちょっかいをだしていますね。だから、彼らには、本当に「遊びにきている」と思われているかもしれません。

最近では、自分より一回り下の後輩が入ってくることも増えました。若い人たちの発想にはできるだけ耳を傾けるようにしています。そのために、若い人とはおちゃらけたり、飲みに誘ったり、立ち話をしたりします。内心、腹が立ってくることもありますが。それでも怒鳴ったりすることはありませんね。

企画は920個以上落ちても、全力でバットを振る

「勝つょ」――。伊藤氏の手帳の中には、その文字が大きく記してある。「勝つ」とは言葉どおり、「全局1位」を目指すこと。さらに「限界突破をするのは心である。正直さをもって勝つ」と書かれている。限界突破とは「視聴率」のこと。10%では他局とほぼ横並び。勝ちとは言えない。テレビ東京が視聴率13~14%を取って「全局1位」を目指す。そしてその方法論は、視聴率を意識して数字を取るためのロジックを並べることではなく、「全力でバットを振ること」だという。
次ページ鼻水がでただけでも企画になる
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