丸の内戦争で、パレスホテルが浮上したワケ 決死の大改装で、”ホテル族”を魅了?

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旅行雑誌で世界一になるために

――パレスホテルの宿泊価格は、けっこう高いですよね。知名度や会員プログラムで勝る外資の国際ホテルチェーンがどんどん入ってくる中で、競争するのは大変ではないですか。

確かに、チャレンジだと思いますね。ただ、新装開業から1年が経ち、海外でも(認知が)浸透してきた。現在、お客様に占める外国人比率は6割強ですが、8割強は海外のお客様という日もあるんですよ。

全面改装で建物は10階建てから23階建てに。オフィス棟も備える複合ビル化した

実はオープン前から、アジアや米欧でホスピタリティ専門のPRエージェンシー4社と契約して、メディア戦略を積極的に展開しました。単なる広告でなく、いかに記事を書いてもらうかを重視し、たくさんのメディアに取り上げていただきました。

その結果、『トラベル&レジャー』というアメリカで100万部売る富裕層向けの旅行雑誌で、過去1年間にオープンした100室以上のホテル部門で、ベストホテルを受賞したのです。

――世界のベストホテル、つまり世界一ということですか?

 そうです。

――それは、すごいですね。

日本ではなく、世界ですからね。これからも地道な営業活動が必要ですが、こういった独立系ホテルのよさというものは、きちんと伝わっていくものだと思っています。

世界中どこに行っても同じという、国際ブランドの安心感は確かにあります。でも、お客様の中には、せっかくいろいろな都市に行くのだから、その都市ならではのよいホテルに泊まりたいという人も必ずいるはずなんですよね。

――最近は、客室稼働率も上がってきたと伺っています。

非常に順調です。震災後は海外からのお客様が大きく落ちこみましたが、その後はビジネス、レジャーともに増えていますね。

パレスホテルが外資系ホテルと違うのは、宿泊の売上高は全体の25%でしかないのです。約50%が宴会で、25%がレストラン。だから宿泊部門はじっくりと育てる、ということができます。

――リニューアルが失敗したらと、眠れないこともありました?

それはありましたよ。でも、宿泊ではない部分で、75%の売り上げ基盤がありますので。

パレスホテルがオープンしたから、世界中からお客が来る、なんてことにはなりません。あまり焦って、(宿泊)価格を下げてしまうと、“安いホテル”ということになっていまいます。そうではなくて、中期的に、あと1~2年かけて、じっくり育てていくことがいいのではと思っています。

(撮影:梅谷秀司)
 

筆者が手掛けた東洋経済オンラインのホテル連載が、電子書籍「1泊10万円でも泊まりたい ラグジュアリーホテル 至高の非日常」(小社刊)になりました。10万円以上するような部屋に泊まりたいと思わせるラグジュアリーホテルの魅力とはいったい何なのか。厳選9ホテルの総支配人たちが大いに語っています。

山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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