現在開催中の臨時国会(11月末まで)における経済政策についての論戦で、民進党の野田佳彦幹事長は「アベノミクス第1の矢の手詰まりはあきらか」「マイナス金利は金融機関の経営に悪影響を与えている。日本銀行にマイナス金利を撤回させることを、政府として要請することを提案する」と述べるなど、日銀の金融緩和政策に対して批判的な姿勢を鮮明にした。
同党の蓮舫代表は、代表選討論で「アベノミクスに一定の評価はできる」と述べていた。実際には、野田幹事長の上記のような姿勢を見ると、かつての民主党政権と同様に、真っ向から反対する姿勢で安倍政権に対峙していくようだ。
一連の論戦では、安倍首相などから、アベノミクス発動以降の失業率低下や株高など具体的な成果が示され、「民主党政権時代よりも改善している」と反論され、議論はそれ以上深まらず終わったようである。建設的な政策議論が可能な経済政策を掲げる野党勢力が現状皆無であることは、依然、日本経済の潜在的なリスクである。
10月23日に行われた衆議院の2つの補選(東京10区と福岡6区)では、予想通りともに自民党が勝利したが、前回コラム「東京五輪で見えたアベノミクス成功の鍵」でも指摘の通り、広範囲な東京都政の見直しを掲げる小池百合子都知事とどのような関係を構築するか、そしてロシアとの外交交渉の成果が、安倍政権の支持率や衆議院の解散総選挙の時期に影響することになりそうだ。
日銀新政策はグローバルレベルでは「緩和」が常識
実は、国会におけるアベノミクスを巡る「かみ合わない議論」は、金融市場関係者が抱く日銀の金融政策についての見方と似ている部分がある。この点は、今後の金融市場の先行きを考える材料の一つとして、興味深い。
周知のように、日銀は9月21日に、イールドカーブコントロール導入を含めた政策の変更(フレームワーク変更)を行った。これに対して、「量的金融緩和の限界」、「日銀の失敗」などの市場関係者の見方は、メディアを通じて未だに散見される。これらの見方のほとんどは、日銀の金融政策に対する誤解(思い込み)だと筆者は認識している。
日銀の政策については、筆者はすでに「『日銀の金融緩和は限界』は全くの誤解である」(9月26日配信)でも解説した通りだ。インフレ率上振れを許容するオーバーシュート型コミットメント採用に加えて10年国債金利をゼロに誘導するフレームワークは、金融緩和強化、つまり緩和策の進化というのが、筆者が属するグローバルな投資家の中で議論されている一般的な評価である。2%インフレ実現が遠のいている現状を踏まえ、金融緩和を強化したということである。
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