米国がドル高を避けるために打つ「秘策」 日本株は目先上昇でも、リスクは必ず顕在化

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3回目の米大統領候補者TV討論会も終了。マーケットはクリントン大統領も織り込みつつ堅調だが、筆者は「ドル高は続かない」と読む(写真:UPI/アフロ)

筆者が「Xデー」と設定した10月14日までの間に、マーケットには何かが起きると考えていた。だが、いまのところ、ほとんど何も起きていない。20日の日経平均株価は1万7235円で終了、約半年ぶりの高値となった。現地時間19日に行われた米大統領選候補者のTV討論会も、マーケットでは大きくは材料視されなかった。

日経平均は1万7000円台後半まで戻す可能性も

テクニカル分析では、しばしば「黄金分割比率」が用いられるが、昨年6月の高値2万0952円(A)と今年6月の安値1万4864円(B)をもとに考えると、一つの重要な節目の価格は1万7190円だった。それを抜けてきたことで、次は落ちた分(A-B=6088円)の「半値戻し水準」(B+3044円=1万7908円)が次の視野に入って来そうだ。

市場とは面白いもので、「ドイツ銀行が倒産しそうだ」「米大統領選でトランプ氏が勝利すれば、株価は暴落する」などという見方が広く浸透すると、それをすぐに織り込んでしまい、実際には「すぐには何も起きない」ことも珍しくない。今回は、市場関係者の多くが、これらを材料に株価の下落リスクを声高に叫んだことが、急落回避の背景にあるのだろうと考えている。しかし、それは、あくまで「今の時点」であり、今後何かがおきれば、「やっぱり起きたか」となる。それも、市場がこれらのリスクを忘れたころに起きるのが常である。

今の市場は、現時点で知り得る材料をかなり織り込んでいるように見える。12月の米当局の利上げまでも織り込んでいるといえそうだ。ドルは直近でかなり上昇しているが、米長期金利の上昇が背景にあると考えるのが普通である。

しかし、米ドルの上昇の裏には、欧州通貨の大幅下落があることを忘れてはいけない。米国はこれ以上のドル高を受け入れるとは考えにくい。欧州通貨の下落は、いわば「米国のコントロール外」のところで起きているが、このような動きを是正する動きがいずれ出てくるだろう。

例えば、ドイツ銀行問題が再浮上したのは、直接的には、米国司法省が賠償金を要求したからだが、これこそ、米国が欧州に仕掛けた見えない圧力である。米国はドイツ銀行の問題をきっかけに、金融市場の構造の整理・再編を仕掛けているようにもみえる。現在のように、市場参加者の多くがドイツ銀行の問題を材料視しなくなっていることで、将来この問題がひどい結末を迎える可能性はかえって大きくなっているように思われる。

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