米国がドル高を避けるために打つ「秘策」 日本株は目先上昇でも、リスクは必ず顕在化
これは、ドル円についても同じである。過去のドルの動きを見れば、ドル高に行きづらいことは明白である。一部には円安期待があるようだが、110円手前まで戻せば十分すぎるだろう。大局的にみれば、ドル安はあと6年程度継続し、2022年程度までこの傾向が続くと筆者はみる。ドル円も当然下落する。目先は105.50円が重要なポイントとみているが、これを超えるのも相当の力がいる。結局のところ、ドル円は戻り売りでしかない。今度99.50円を明確に下回れば、数年間は100円を回復することはないだろう。
もしかしたら、今後数カ月は円高に歯止めがかかった状態が続くかもしれない。だがそれはあくまで一時的な動きでしかないことを肝に銘じておくことである。しかも、政策面からは、ドル安を志向するクリントン氏が次期大統領になれば、円高はほぼ確定的になる。トランプ氏の政策の方が、円安になる可能性が残るだけに、米国がドル安を志向するのであれば、結果的にクリントン氏が大統領に選出される力が働くことになりそうである。
停滞期に入った中国経済はいずれ問題視される
為替・通貨という点では、人民元の動きが懸念される状況にある。人民元は徐々に切り下がっているが、そうしないとやっていけない状況に追い込まれているということでもある。
外貨準備の減少傾向が顕著だが、人民元安の動きと見事に連動している。外貨準備の減少の背景には、貿易収支の悪化傾向もある。9月の中国の輸出が前年同月比10%も減少するなど、貿易収支は伸びを大きく欠いている。
中国を中心に新興国経済が台頭し始めた2001年以降の中国の貿易収支の動きを見ると、ここ数年の伸びから大きく鈍化しており、停滞期に入った可能性が見て取れる。
10月以降も貿易収支が減少するようだと、その傾向がさらに強まったとの認識が広がり、世界経済への懸念が高まる可能性がある。
そうなれば、外貨準備の減少傾向が強まり、中国政府はさらに元安を推し進める可能性がある。一方で、その補てんとして米国債の売却を進めることも想定される。
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