米国がドル高を避けるために打つ「秘策」 日本株は目先上昇でも、リスクは必ず顕在化

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実は、中国の8月時点の米国債の保有残高は1兆1900億ドルとなり、前月から337億ドル減少している。減少幅は2013年以来最大で、保有残高も2012年11月以来の「低水準」である。外貨獲得のルートが完全に閉ざされることはないが、このまま輸出減退が続けば、米国債の売却を推し進めることになり、その結果、米国の長期金利が上昇することはあり得るシナリオだ。

そうなれば、ドル高圧力が掛かることになるが、米国サイドはこれ以上のドル高は避けたいと考えている。何かしらの手段を使って、これを沈静化させることを考えているはずである。その一つが原油価格である。

昨年8月の「チャイナショック」以降、中国はこれまで市場の懸念材料のひとつだったが、最近は比較的材料視されることは少なかった。しかし、今回の輸出減少で再び中国リスクを懸念する声が上がり始めている。

中国と米国の関係でいえば、原油相場の動きはきわめて重要である。7〜9月期の中国のGDP成長率は前年同期比6.7%増だった。リーマンショックの影響が出た2009年1〜3月期以来、7年ぶりの低い伸び率にとどまった。

中国経済には原油高は大きな痛手

しかし、3期連続で同じ成長率になっていることは不自然であり、これを真に受ける向きはむしろ少数派であろう。それはともかく、中国経済にとって痛手となるのが原油高である。

市場では、久方ぶりに卸売物価がプラスになったことを好感しているようだが、原油高がより明確になれば、むしろ中国経済には痛手となる。その原油価格は一見、OPECの非公式会合での減産合意で上昇したかのようにみえる。だが、実際には誰が動かしているのだろうか。またFRBが利上げ先送りを続けているのは、単純に株価維持だけではないだろう。現在の市場において、「ドル安・原油高」への動きが、今後何をもたらすのかを理解しておくことが肝要である。

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ここまでの説明を上手くリンクさせて考えることができれば、今の市場を違った角度から見ることができるだろう。それは、表層的な市場のコンセンサスとは真逆の見方になる。結局のところ、米国が原油価格の方向性を決めることができるようになったことが、きわめて大きいといえる。

これによって、今後の市場の枠組みが大きく変わりつつある点は極めて大きな歴史的変化である。これが、ひいては世界の枠組みの変化につながることはいうまでもない。

今回の本欄がややわかりづらい内容になっていることは承知しているが、これまでの記述には今後の市場動向あるいは世界の枠組みを再考する上で、きわめて重要なヒントがちりばめられている。これらのポイントをリンクさせ、さらに広げて考えることができれば、今後の市場動向を理解することが容易になるはずである。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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