介護の世界から返り咲いた鬼才プロゲーマー 新世代リーダー プロゲーマー ウメハラダイゴ
「春麗」の最強の連続技、「鳳翼扇」が発動。「レッツゴー!ジャスティン!!」アメリカの熱狂的なファンの怒声とともに、春麗がケンとの距離を詰め、「削り」で試合を決しようとした。
その刹那、削りのダメージをすべて防ぐ、「ブロッキング」という技を入力し、春麗の大技「鳳翼扇」を受ける。「受ける」といっても、コマンドの入力時間は30分の1秒以下。それを連続して入力しつづけなければならない至難の技だ。それを敵地・アメリカ、しかも世界大会という舞台でやってのけた。17連続にも及ぶ連撃を受けた後、一瞬のすきが生まれた春麗に怒涛の反撃を叩き込む……。格闘ゲームがわからない人でも会場の異様なまでの盛り上がりを見れば、ウメハラの離れ技のすさまじさが伝わるだろう。
あの窮地に追い込まれる中、ウメハラの脳内には何が交錯していたのだろう。「格闘ゲームに絶対はありませんから。逆に言えば、ジャスティンの勝ちだって“絶対”ではなかったわけです」。あの状況で、逆転の可能性を模索していたのはウメハラ独りだったに違いない。
ファンの熱狂的な盛り上がりについても、「あの時、会場の音はまったく聞こえませんでしたね。聞こえていたらあれはできなかったと思います。」ウメハラのゲームへの集中力は達人の域まで進化していた。
ゲームの世界から突如、身を引く
だが、ジャスティン・ウォンとの激闘から1年、「日本国内に敵なし」と言われた天才は突如、勝負の舞台から降りた。その後、麻雀の道に入る。そこから3年間、雀荘で1日12時間、アルバイトし、帰宅してからも自主研究を徹底的に行い、麻雀でも頭角を現す。「プロ並みには打てるようにはなれたと思います。まず大抵の人には負けないですよ。寝ているときもずっと歯ぎしりをするくらい研究していましたから」。だが、3年間続けた麻雀も、ある日、辞めようと決意したという。
20年近く、毎日打ち込んできた格闘ゲームやプロ並みの腕前を持つに至った麻雀を、なぜこうもあっさり辞めることができたのだろうか。その答えを知るためにはウメハラにとって、「勝負とは何か」ということをひもとかねばならない。