ゴーンの懐刀が挑む、マリノス改革の全貌 横浜F・マリノス、嘉悦朗社長に聞く(上)

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採用された主なアイデアは次のものだ。

CFT#1:ホームタウン活動

・地元中の地元、スタジアムがある港北区にフォーカスを当てる。

・港北区にある25の公立小学校の全生徒に、選手の名前と顔写真が入った下敷きとクリアファイルを配る。

・港北区の全小学校に、トップチームの選手を2名ずつ派遣。

もしかしたら即効性はないかもしれません。けれど、10年、20年経ったときに、マリノスがその子供たちの生活の一部になっているかもしれない。大人になったときに「日産スタジアムに行くのは当たり前だよね」という家庭がいっぱい出てくることを期待しています。

CFT#2:プロモーション

・近隣の人気コンテンツをライバルと見るのではなく、積極的にコラボレーション。

・横浜ベイスターズ、八景島シーパラダイス、ズーラシア、横浜アイスアリーナとのコラボレーションが実現。『キャッツ』の横浜公演中には、劇団四季ともコラボ。相互協力のポスターを作った。

横浜には野球のプロチームがあるし、いろいろなエンターテイメントがあります。それを逆手に取ったんです。たとえばマリノスの中澤佑二とアイススケートの荒川静香さんがいっしょにポスターに写っていれば、両方のファンが目に留めますよね。アイスアリーナの半券を持って来れば、日産スタジアムのチケットを割引するというキャンペーンも行いました。

CFT#3:ホスピタリティ向上

・スタジアムを“東京ディズニーランド”にする。

・ディズニーランドの研修を受けた。

ディズニーランドは、お客様に待機時間を感じさせないように、1分1秒たりとも飽きさせないサービス精神がある。「もてなし」のアイデアや精神で満ちていました。それを日産スタジアムで、限られたおカネの中で実現したいんです。

60%アップしたスクール収入とグッズ収入

嘉悦が正式に社長としてスタートした2010年、マリノスはスペインから獲得した中村俊輔の人気も手伝い、目標の集客20%増には届かなかったものの、16%増を実現。嘉悦にとっても、スタッフにとっても、大きな自信になった。次のステップとして嘉悦は『MAP13』と題した成長3カ年計画を発表し、6つのCFTを作った。

売り上げを劇的に伸ばすためのプロジェクトなどに対して、今度は145個のアイデアが出ました。3カ年を月単位まで落とし込んで、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善のサイクル)で回しています。特にグッズ収入とスクール事業が伸びて、僕が来た2009年対比で両部門の収益が計60%アップしました。

やはりここでも役立ったのは日産流だった。

グッズ収入はショップにおける商品の動きを週単位で見て、PDCAサイクルを細かく回して管理しています。スクール事業のほうは僕が日産に導入した「V-up」という改善手法を使った。生徒数をどうやったら増やせるか、どうやったら減らさずに済むか、この両方を生徒さんと保護者目線で分析して対策を立てる。入場者数は2009年対比で5%くらいしか増えていないんですが、Jリーグ全体はマイナス7%。全体が減っている中でうちは増やしている。改革の成果は間違いなく出ていると思います。

※ 後編はこちら:マリノスは、なぜ好調なのに”赤字”なのか

(撮影:今井康一)

木崎 伸也 スポーツライター

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きざき しんや / Shinya Kizaki

1975年東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。2002年夏にオランダに移住し、翌年からドイツを拠点に活動。高原直泰や稲本潤一などの日本人選手を中心に、欧州サッカーを取材した。2009年2月に日本に帰国し、『Number』『週刊東洋経済』『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。おもな著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『クライフ哲学ノススメ 試合の流れを読む14の鉄則』(サッカー小僧新書)など。

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