ゴーンの懐刀が挑む、マリノス改革の全貌 横浜F・マリノス、嘉悦朗社長に聞く(上)

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――ただコストを減らせばいいわけじゃないと。

まずは強化費を適正な水準まで持ち上げようと考えました。ここで投資しないと、このクラブが持っている歴史と伝統を維持することはできないと。ただし今はおカネがない。じゃあおカネを作ろうと考えて、いちばん重要なものとして集客を考えた。スタンドがお客さんで埋まっていれば、スポンサーを増やすことも期待できる。そのときの目標の立て方が“日産流”だったんですね。

会社の変革につながるようなインパクトを持った目標を作りたい。とはいえ、実現の可能性が感じられない数字では意味がない。そこで前年比20%増という目標を打ち出した。その数字は2万6000人なんですが、偶然にもマリノスの過去最高の観客数がそれだったんです。1度やったことがあったら、できると感じるでしょう。そして挑戦して成功したら、その先にあるもっと大きな改革のエネルギーになります。

リピーターを増やすための戦略的アプローチ

――その実現のために日産のCFTの手法を利用したんでしょうか?

そうです。マネジメントを数人の限られた人間が考えるのではなくて、異なる部署の人間を集めてチームを作り、革新的なアイデアを出させる。僕が社長に就任したとき、3つのチームを作りました。

マーケティングの概念で、「パーチェス・ファネル」というものがあります。逆ピラミッド型で、上から順番に「認知→理解→好意→購入意向→購入→再(リピート)」と並んでいる。お客様が車でなんであれ、商品・物に対価を払っていただくには、ここにあるごく当たり前のロジックをたどっていただく必要がある。しかもこのプロセスをしっかり広げていかないと、リピーターが増えません。

ここで嘉悦は席を立ってペンを持ち、ホワイトボードに図を書き始めた。認知→理解→好意→購入意向→購入→再という逆ピラミッドを描き、日産を例にこのパーチェス・ファネルの概念を説明した。その流れは次のようなものだ。

①日産というメーカーを何となく知っている(認知)

②どんな企業かよく理解している(理解)

③したがってその日産が好きだ(好意)

④だから日産の商品を選ぶ(購入意向)

⑤商談をして買う(購入)

⑥サービスも良く、商品に満足したのでリピーターになる(再)

当然、「認知」から「再(リピート)」に至る過程で人数は段階的に減って行くが、部分的ではなく、すべてのプロセスに戦略的にアプローチすることが大切なのだ。

次ページプロセスは自動車業界と同じ
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