マリノスは、なぜ好調なのに“赤字”なのか 横浜F・マリノス、嘉悦朗社長に聞く(下)

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2010年からマリノスの社長を務める嘉悦朗。親会社を持つクラブの“タブー”にもメスを入れた

※ インタビュー(上):ゴーンの懐刀が挑む、マリノス改革の全貌

嘉悦朗は横浜F・マリノスの社長として経営改革を進める一方で、監督の人事権を持つなど、チーム強化の方向性を定めることも大きな仕事だ。

その強化の取り組みも、実を結びつつある。

嘉悦が正式に社長に就任して以来、マリノスは2010年に8位、2011年に5位、2012年に4位と着実に順位を上げている。そして今季は開幕のスタートに成功して、12節時点で2位につけて優勝争いに絡んでいる。

日産自動車時代にプロジェクトリーダーとしてビジネス界で活躍した嘉悦だが、サッカーの分野では門外漢だ。ノウハウは一切ない。いったいどうやってサッカークラブの強化という未知の領域に挑んだのだろうか?

ビジネスもサッカーもやるべきことは同じ

――嘉悦社長はサッカー畑出身ではないですね。もちろん強化部の尽力も大きいと思うのですが、なぜ強化面もうまくいっているのでしょうか。

僕もマリノスの社長に就任するまでは、チーム作りというのは、ビジネスの世界とは異なるものだと思い込んでいました。けれど、それは間違いでした。結論から言えば、ビジネスもサッカーも、やるべきことは同じなんです。

――そうなんですか?

また図を使って説明したいと思います。

まず縦軸にチームの成績を取ります。上が1位で、下が18位ですね。次に横軸にチームスタイルを取ります。戦術と言い換えてもいいでしょう。左に行くほど、スタイルが定まってない状態で、右に行くほど、スタイルが定まっている状態です。

――おもしろいマトリックス図ですね。

いちばんいいのは、順位もよくて、スタイルもはっきりしている状態。図で言えば右上(①)の領域ですね。最悪なのは、順位も悪くてスタイルもメチャクチャな状態。左下(④)の領域です。これまで僕は現実的に考えて、チームスタイルは我慢して、まずは目先の成績から上げないといけないと考えていました。

しかし、就任からいろいろな経験をさせてもらった結果、やっと気がついたんです。「チームスタイルがあいまいだと、選手の替えも効かない。補強する選手もそこに当てはめることができない」と。たとえ順位が悪くても、まず手をつけるべきはスタイルだと思いました。図で言えば、左下の領域(④)からスタートして、我慢しながら少しずつ右(②)に移動し、そこから急上昇して右上の領域(①)に到達するというルートです。

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