マリノスは、なぜ好調なのに“赤字”なのか 横浜F・マリノス、嘉悦朗社長に聞く(下)

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しかし、嘉悦にとって、想定外のことが起こった。

Jリーグがアジアサッカー連盟の意向を受けて、急きょクラブライセンス制度を導入。2014年度に債務超過に陥っているクラブは、ライセンスを剥奪されることが決まったのだ。もし剥奪されれば、J2に強制降格させられる。このルールを厳密に適用するなら、マリノスは2014年度末までに約10億円もの債務超過額をほぼゼロにしなければいけないことになる。

デッドラインまであと1年半

クラブライセンス制度によって、急に赤字が許されなくなったのは、僕の最大の誤算です。それでも親会社からの補填なしで、ぎりぎりまで挑戦したい。こういう真意があるのに赤字だけ見て非難されるのは、アンフェアだと思います。デッドラインの2014年度末まで、あと1年半ある。最後はどこかで日産に頼まざるをえない瞬間が来るかもしれないですけれど、悪あがきを続けたい。

チームの成績は向上し、グッズ販売、スクール事業での収益もアップした。観客動員数もJリーグの平均からすると健闘している。現実的には2014年度末に債務超過を消すための協力を一時的に親会社に頼まなければいけなくなるだろうが、今の取り組みを続けていけば、必ず自前経営を実現できるはずだ。

これまでJリーグには、日本ハムからセレッソ大阪の社長に就任した藤井純一、三菱自動車から浦和レッズの社長に就任した犬飼基昭など、ビジネス界からサッカー界に転じて成功した名物社長は存在した。だが、嘉悦ほどビジネス界の理論的な手法をサッカークラブ経営に適用した人物はいなかっただろう。

将来、嘉悦のマリノスでの取り組みは、Jリーグのクラブ経営の模範のひとつになるのではないだろうか。

(撮影:今井康一)

木崎 伸也 スポーツライター

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きざき しんや / Shinya Kizaki

1975年東京都生まれ。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。2002年夏にオランダに移住し、翌年からドイツを拠点に活動。高原直泰や稲本潤一などの日本人選手を中心に、欧州サッカーを取材した。2009年2月に日本に帰国し、『Number』『週刊東洋経済』『週刊サッカーダイジェスト』『サッカー批評』『フットボールサミット』などに寄稿。おもな著書に『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『クライフ哲学ノススメ 試合の流れを読む14の鉄則』(サッカー小僧新書)など。

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