お見合い以外にも効く、37%以降の「本気」
このお見合い問題の解法は、より一般的な出会いについても応用することができるかもしれない。
いま仮に、1年に1人のペースで、恋人になりうる男性と出会う女性がいるとしよう。彼女の年齢はちょうど20歳、20代で絶対に結婚相手を見つけたいと考えているとする。
このとき、20~29歳の10年間に、潜在的には10人の男性との出会いがあることになる。上の分析をこの状況に当てはめると、最良の相手とゴールインする可能性を最も高めるためには、最初の3人、つまり22歳までに出会った相手とは、交際の有無に関係なく絶対に結婚せず、23歳以降に出会い、付き合う恋人の中から、真剣に結婚相手を選べば良いことがわかる。
若いうちの恋愛はあえて成就させず、理想の相手を将来きちんと選ぶための判断材料にせよ、というわけだ。
ビジネスの世界でも、この理論が役に立つ可能性はある。たとえば、ある企業が新規ビジネスの商談を行う際、潜在的な契約相手が5社あるとしよう。商談をきちんとまとめるには十分な準備と時間が必要になるため、順番に1社ずつとしか交渉できず、一度交渉に入ったら結果が出るまで次の相手とは交渉できないとする。
この状況は、実質的にお見合い問題と同じだ。ここでの最適戦略は、最初の2社とは契約せず、3社目以降、それまでで最も良い条件を提示してきた企業と契約する、というものになる。
お見合い問題のストーリーが文字通り当てはまるような状況は限られているかもしれない。けれども、37%ルールやその背後にあるアイデアを頭の片隅に置いておけば、現実の恋愛やビジネスに役立つ日がいつかやってくるだろう。ぜひ、理想の出会いをつかんでいただきたい。
【初出:2013.4.13「週刊東洋経済(良い値上げ、悪い値上げ)」】
(担当者通信欄)
基準を作ることが、良い判断のカギ。これを就職活動にあてはめると、まずいくつかの企業に応募してみることは、練習のつもりで本命以外の選考を受ける場合のみならず、本命がはっきり定まっていない場合にも、やはり有益なように思われます(企業が負担する選考コスト問題などはとりあえずおいて)。現実には、就職も結婚も各種取引も、相手から断られないような恵まれたケースばかりではありませんが、「出会い」の回数をざっくり見積もった上で、37%ルールを発動させるサーチの技法には、広い範囲への応用を期待できます。
さて、安田洋祐先生の「インセンティブの作法」最新記事は2013年5月13日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、会社の数字)」に掲載です!
【人類対コンピュータ、必勝法はどこにある?】
先日行われた、将棋の「電王戦」、現役プロ棋士5人 vs 5つのコンピュータ将棋ソフトの団体戦で、コンピュータがプロ棋士を負かしたことが話題になりました。そんな驚くべき事件に、いずれコンピュータが将棋の必勝法に至る未来さえ予感されますが、そもそも将棋に「必勝法」などというものはあるのか? あるとしたらどうやって見つけるのか? 経済学に馴染みが深い「ツェルメロの定理」から考えます!
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