お小遣いルールに学ぶ制度設計の経済学

逆選択とモラルハザードの違いがわかる!

 子供時代を思い出してほしい

著者:安田洋祐(経済学者、政策研究大学院大学助教授) 撮影:尾形文繁

子供の頃、あなたはどのようなルールでお小遣いをもらっていただろうか? どうしてそのルールになっていたのか、理由を説明することができるだろうか?

こう聞かれると、唐突に感じるかもしれない。だが、このシンプルな質問は、社会や経済の仕組みのデザイン、つまり制度設計に通じる問いかけでもあ るのだ。親が子供に与えるお小遣い、そんな身近なテーマを手掛かりに、今回は「制度を設計するうえでの大事な注意点」について考えてみたい。

仮に今、ある家庭で「お小遣いは必要に応じて適当な金額をその都度親が子供に渡す」というルール(「要求制」と呼ぼう)が定められていたとする。このとき、いったいどんな問題が生じるだろうか。

もちろん、実際に何が起こるかは場合によりけりで、ピンポイントな予測は難しい。そもそも、子供が正直に自分の買いたいものを選び、その必要性をウソ偽りなく親に伝え、親が子供からのリクエストをきちんと判断できるような家庭であれば、まったく困難は生じないのだ。

しかしこの要求制の下では、多くの家庭で、子供が必要性の低いオモチャまでどんどんおねだりするようになったり、使い道をうまくごまかしておカネを貯め込んだり、前もって決めておいた約束とは違うことに使ってしまったり、といった問題が、きっと出てくる。逆に、子供にとって本当に必要なものが何なのかを親が判断できずに、本当は渡すべきおカネを与えられない、そんな問題も起こるかもしれない。

このように見ていくと、お小遣いの要求制というのは、いかにもうまくいかなそうなルールだ。実際に、要求制のお小遣いルールを採用している家庭は少数派で、「月々いくら」といった定額制のほうがはるかにポピュラーだろう。では、この要求制ルールの失敗をもたらす本質的な理由とはいったい何なのだろうか。

 

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