お小遣いルールに学ぶ制度設計の経済学 逆選択とモラルハザードの違いがわかる!

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銀行融資で情報の非対称性を考えると……

まず、銀行は投資プロジェクトの収益性や採算性について、当事者である借り手ほどには詳しく知らず、収益性に応じた金利の設定はできない。すると、高い利率になればなるほど、(平均的には)収益性が低く、債務不履行のリスクが高い企業が融資を求めてくるようになる。ここで貸し倒れリスクに対処しようと下手に金利を上げると、借り手の質はさらに悪化、融資の採算を取りにくくなってしまうかもしれない。

ちなみに、融資を決定する前から情報の非対称性が存在する状況を、アドバースセレクション(逆淘汰)と呼ぶ。この名称は、良い借り手が市場から退出し、悪い借り手が生き残る、という ――いわゆる自然淘汰とは逆の―― 現象が、事前の情報の非対称性によって引き起こされることに由来する。

運用に成功すれば億万長者、失敗しても馘首程度……(撮影:今井康一)

また、銀行には自分たちの貸し出した資金が実際にどのように使われたのかも正確にはわからない。このように、融資を決定した後に情報の非対称性が発生する状況はモラルハザードと呼ばれる。このモラルハザードに対処するためには、借り手の行動を律する契約やルールなどの仕組み作りが欠かせない。リーマンショックの際に、運用成果に連動した報酬を受け取る投資会社やファンドマネジャーたちの、過度にリスキーな投資行動が問題となったのは記憶に新しいが、これも典型的なモラルハザード問題の一例だった。

ここまでの話をまとめると、制度を設計する際には、個々の参加者が設計者の知らない私的な情報を持っていて(=情報の非対称性)、その情報を生かしつつ参加者自身にとって得になるように振る舞ってくる(= 利害の不一致)、という点に注意することが重要だとわかる。

これらの特性をくみ取らずに、要求制お小遣いのような浅はかな制度設計を行うと、参加者たちに制度の裏をかかれて失敗してしまう。要は、「インセンティブと情報の問題をきちんと考慮しない制度設計は絵に描いた餅にすぎない」のだ。

 

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