お小遣いルールに学ぶ制度設計の経済学 逆選択とモラルハザードの違いがわかる!

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制度設計に立ちはだかる二つのギャップ

それは、親と子供の利害の不一致、そして両者の間に横たわる情報の非対称性だ。具体的にいうと、利害の不一致は「子供はできるだけたくさんお小遣いが欲しい。一方で、親は適度な金額を渡したい」という目的のギャップに対応している。

貯金箱に貯めこんだり、美味しそうなお菓子につられたり……(撮影:今井康一)

情報の非対称性は、「親は子供が何をどれだけ欲しいか本当のところを知らない」、あるいは「渡したおカネが実際に何に使われたのかわからない」という情報のギャップに対応する(経済学の世界では、前者の状況をアドバースセレクション、後者をモラルハザードと呼ぶのだが、それはまた後で説明しよう)。

さて、このようなギャップは、お小遣いルールの設計のような家庭内の決め事だけでなく、世の中のさまざまな制度設計において現れる、一般的な課題であることが想像できるのではないだろうか。そこで今度は、親=銀行、子供=企業(借り手)、お小遣い=融資、と置き換えて、銀行融資について考えてみよう。

安定した短期的な融資の返済を要求する銀行と、自社の存続や長期的な利益の最大化を目指す企業との間では、しばしば目的が食い違う。つまりそこには、一つ目のギャップである利害の不一致が存在しうる。これを前提とすると、二つ目のギャップ、情報の非対称はどのような問題を引き起こすのだろうか。

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