数学で未知のことに向かう活力を得る--『数学入門』を書いた小島寛之氏(数学エッセイスト、帝京大学経済学部教授)に聞く

数学で未知のことに向かう活力を得る--『数学入門』を書いた小島寛之氏(数学エッセイスト、帝京大学経済学部教授)に聞く

斬新な切り口と明快な組み立てで、新書ながら本物の数学がわかる本格派独習書として好評だ。基礎中の基礎から出発して、深遠な現代数学の入り口まで到達できるスピード感あふれる学び方とは。

──数学では「ピタゴラスの定理」が大活躍するのですね。

ピタゴラスの定理は数学史上最大の発見と言ってもいい。「直角三角形の斜辺の平方は他の2辺の平方の和」という定理として中学で習う。それが無理数、三角関数やベクトル、4次元、さらには整数論や「フェルマー予想」にまでも関係しているとは、多くの人が思っていないのではないか。こういう「貫き方」で関連性がわかると、数学のイメージがグーンと違ったものになる。

数学は、意味のない呪文を覚えさせられているような、苦行の世界では決してない。学校教科書とは並べ方を変えて、関連性で全体の見通しを立てる。そうして数学の全体地図を頭に入れて、今この辺を歩いているのだとわかれば、意欲も湧くし、知的努力も楽しくなろう。

──ベクトルもその定理と関連性がある?

幾何学の法則を代数計算に還元する、つまり座標平面という方向に進めて、負の数が導入されてくる。ベクトルの背後に正の数、負の数が関連していることは教科書を読んでいただけではわからない。学校でも正負の数は中1で勉強するが、ベクトルは高2なので、その間に何年も経っていて、それがリンクしているとは気づきにくい。それを結び付け、さらにベクトルの内積などという考え方を進めていくと、現代物理学や経済学に関係するヒルベルト空間という超最先端のところまで行ける。あっという間に現代数学に駆け上っていけるのだ。

──この定理は4次元理解とも結び付くとか。

円の方程式、球の方程式を高校生は学ぶが、それだけを取り出すとただそういうことかとしか思えない。実はそれらも、ピタゴラスの定理が「空間の計測理論」の出発点になって発展したもの。

あのアインシュタインの相対性理論でさえ、その発展形だと言えるし、さらには最近「ポアンカレ予想」をペレルマンが解決して話題になったが、その証明も、もう一つ考え方の扉を開けることで、証明に行き着けた。基礎中の基礎、ピタゴラスの定理を出発点にして、この本の第1章のスピード感を楽しんでほしい。

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