数学で未知のことに向かう活力を得る--『数学入門』を書いた小島寛之氏(数学エッセイスト、帝京大学経済学部教授)に聞く
──関数から行列の理解に進むのが、第2章です。
関数は、「一つの量を別の量と結び付ける仕組み」のことだ。英語のファンクションを中国語訳したものを当用漢字で表記した。関数の語源は本来、数とは何ら関係はない。パソコンのファンクションキーから役割を連想できるのではないか。
──関数でも、比例関数が基礎中の基礎ですか。
今、高校まででは中途半端な扱いになっている行列。ほとんどの人は比例関数を発展させたものということがわかっていない。そこで、2変数の比例関数から、それが行列だよ、と急に扉を開けてみせた。比例関数を微小な世界に応用すると、微分が生み出されることも強調した。
共に比例関数という生まれがわかると、その後の展開も理解しやすい。それを、通例のようにまず計算の仕方を覚えよと始めると、意味のわからないことをやみくもに記憶するような耐えられない時間になる。比例関数とわかれば、あらためて計算公式を覚える必要さえない。
──微分、積分がこの本のハイライトですか。
微分の教科書での教え方に昔から疑問を持っていた。接線の傾きだと教える。それも接線が何なのかわからないうちに。これではイメージがつかめない。実用面から見ても、接線は微分の本質だとは言いがたい。この本では、微分を「近似計算を理想化したもの」として説明する。
微分は記号でdy/dx と書くが、そのdxとは何なのか。積分にもdxが出てくる。微分では分母になり、積分では定積分のピリオドの代わり、要するに式はここで終わっているという意味で使われる。無限に小さい変化の中で、割合を見るのが微分であり、無限に小さい変化を積み重ねていくと面積になるというのが積分。一見違うが、同じ意味に使われていると伝えたかった。