プレゼントに潜む「ジレンマ」の正体に迫る 相手のことを思いやるがためにドツボにはまってしまう?

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気がつけばアっという間に1月も半ばとなり、街は2013年本格始動の活気に賑わっている。そんな時期にクリスマスと言うと、ずいぶん昔のことに感じられるかもしれないが、ちょっと思い出してみてほしい。

読者のみなさんの中にも、家族や恋人、あるいは意中の異性にクリスマスプレゼントを贈った方がたくさんいるのではないだろうか。

今回は、そんなプレゼントに潜むインセンティブの問題を考えてみよう。

利己的なカップルが陥る「プレゼントのジレンマ」

著者:安田洋祐(経済学者、政策研究大学院大学助教授) 撮影:尾形文繁

あるカップルがお互いに、相手へのプレゼントをこっそり用意しておくべきかどうか、迷っているとする。

普通プレゼントは相手に喜んでもらうために買うものだが、ここではまず、自分の損得にしか興味がないような、「利己的」な彼氏・彼女をイメージしてみよう。

仮にプレゼントを購入するコストが2で、相手からプレゼントをもらう喜びの大きさが3だとすると、各人の損得は〈図1〉のように表現することができる(これを「利得表」という)。

(注)数値は青色が男性、赤色が女性、黄色い部分はナッシュ均衡

数字の書かれた四つのマスは、起こりうる結果にそれぞれ対応していて、の数字が彼氏の利得を、が彼女の利得を示す。

相手からプレゼントをもらったとき、自分も贈り物をすると1、しないと3の利得が発生するので、贈り物をしない方が2だけ得になる。

逆に相手からプレゼントをもらわなかったときには、自分だけ贈ると-2、自分も贈らないと利得は0となり、この場合もプレゼントを購入しない方が2だけ得になることがわかる。

結局、相手が自分のためにプレゼントを購入するかどうかに関係なく、利己的な個人にとっては「購入しない」のが常に最適な選択となっている点に注目してほしい。

次ページこのあまりに「残念」な状況の構造とは?
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