結果、二人とも贈り物をしないので、このカップルはプレゼントのない寂しいクリスマスを迎えることになってしまう。プレゼントを贈り合いさえすれば、1ずつ利得を得て、どちらもハッピーになれるというのに……。
こうした状況は、この「プレゼントのジレンマ」以外にもたくさん存在していて、一般に「囚人のジレンマ」(参加者が二人の場合)や「社会的ジレンマ」(三人以上の場合)と呼ばれる。
企業間の熾烈な価格競争や、大国間の軍拡競争、共有地の悲劇など、さまざまな現象をこのフレームワークで説明することができる。
有名な「囚人のジレンマ」はプレゼントのジレンマと同じ構造だ。相手が喜ぶ行動を取り合えばお互いに悪くない結果が実現するにもかかわらず、各人が自己利益を追求するため、ドツボにはまってしまう。
個々の参加者が自らにとって最適に行動しても、参加者全員にとって最適な結果が実現するとは限らない、という重要な教訓が、ここから導かれる。
利他的な愛はジレンマを解決する?
次に相手のことを思いやる「利他的」なカップルを分析してみよう。
利他性の表現にはさまざまな方法が考えられるが、ここでは相手の損得が自分の利得となるような彼氏・彼女をイメージしてほしい。彼らの直面する状況は〈図2〉のように表せる。
プレゼントを贈る喜びを3、受け取るときの心の負担を2とする。
最高なのは、相手から自分へのプレゼント(=相手が損をする)がなく、自分から相手にプレゼントを贈る場合だ。
相手の得が自らの喜び、というわけだが、実際には二人ともがそう考えてプレゼントを「購入する」ため、双方1の利得に落ち着く。
相手の損得を考えるカップルには、先ほどの「プレゼントのジレンマ」は生じない。相手が贈り物をする/しないに関係なく、自分が贈り物をする方がしないよりも常に3だけ利得が高くなるからだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら