プレゼントに潜む「ジレンマ」の正体に迫る

相手のことを思いやるがためにドツボにはまってしまう?

ちなみに、「利己的」なカップルの「互いに贈り物をしない」状況、「利他的」なカップルの「互いに贈り物をする」状況では、自分ひとりが行動を変えても、自身の利得を上げることはできない。

誰も行動を変えるインセンティブを持たない、この状況を「ナッシュ均衡」という。

気持ちだけでは、解決できない問題もあるのでは?

さてそれでは、利他的な個人しかいないような世界では、ジレンマはまったく発生しないのだろうか?

相手を思う気持ちさえ強ければ、悲劇を避けることができるのだろうか?

残念ながら答えは「ノー」だ。次にご紹介するオー・ヘンリーの『賢者の贈り物』には、相手を思い合うカップルに生じる悲劇が見事に描かれている。有名な話なので、どこかで耳にされた方も多いだろう。ざっくり言うとこんなストーリーだ。

貧しい夫婦が相手にプレゼントを贈るために、妻は自慢の髪を切り落として売り、夫は大切にしていた懐中時計を質に入れてお金を工面する。ところが、妻が夫のために買ったのは懐中時計を吊るす鎖、夫が妻に贈ったのは髪に飾るクシだった。

それぞれが大切なものを犠牲にして贈り物をしようとした結果、せっかく買ったプレゼントが無駄になってしまう、という美しくも皮肉な物語になっている(実はこの話はハッピーエンドなのだが、それはまた後述)。

(注)数値は青色が男性、赤色が女性、黄色い部分はナッシュ均衡

『賢者の贈り物』で夫婦が直面している状況を大胆に要約すると〈図3〉のように描ける。さきほどの利他的なカップルのケースと同じく、プレゼントを「購入する」のが各人にとって最適な選択となっている。

違いは、お互いにプレゼントを贈り合うと、どちらも購入しない場合よりも悪い結果になる、という点だ。

自分だけが受け取るよりマシだが、贈ったものを使ってもらえない(=相手の得が少ない)のでは贈る喜びが損なわれ、プレゼントをもらった心の負担を相殺できないからだ。

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