自国の歴史を知らないで育つ日本人
この連載を始めてから、アメリカに留学中の学生から、たびたびメールが来るようになった。その内容はだいたい同じで、日本を離れて初めて「自分が日本のことを何も知らないことに気がついた」というのだ。
私たちが日本人であることは、日本にいると自明のことだから、自問自答することはない。しかし、いったん日本を離れて異文化の中で暮らすと、この当たり前のことが当たり前ではなくなってしまう。
以下のメールは、ボストンに留学したばかりの大学生から、つい最近、届いたものだ。
歴史からひもとかれる現在への軌跡を学び、これからわれわれ日本人がどうしていくべきなのかを、今、本気で考えています。
日本が低迷する最大の原因
私の友人にケン・ジョセフという在日アメリカ人がいる。彼は戦後、マッカーサーが「戦争で傷ついた日本人を助けるためにはボランティアが必要だ」という要請に応じて来日した牧師の息子だ。日本で育ち、現在、ボランティア団体を組織して、地震の被災者などの救援活動を行っている。
そんな彼がいつも言っているのは、「日本人は自分たちが誰なのか見失っている」ということだ。そしてこれが「今の日本が低迷している最大の原因」というのだ。つまり、彼に言わせると、日本人はみんな“迷子”だというのである。
「今の日本で何がいちばん悲しいかというと、若い人が自分の国に対して誇りが持てないことです。それは、大人たちが何も教えないからです。教えないで、若い人の悪口ばかり言っている。
迷子を助けるとき、いちばん大切なのは、自分がどこにいるか教えてあげることです。迷子になるというのは、自分が今どこにいるのか、周りがどうなっているのかがわからなくなるからです。
だから、いちばんいいのは、地図をあげること。あなたは、いまここにいて、ここからやって来てここに行こうとしています。周りはこうなっていて、道はこういうふうに続いています。そう教えてあげることです。そうすると、安心して、初めて歩き出すんですよ」
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