自国の歴史を知らず、“迷子”になる日本人 日本の原点は「多民族共生国家」

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日本人はどうやって日本人になるのだろうか? そんな誰もが意識したことがないことを、グローバル化という視点でとらえていくとどうなるだろうか? 21世紀のグローバル化が私たちに突きつけている問題は、国際標準語(英語)を話す国際人になることではない。日本人という確固たるアイデンティティを持って、世界を舞台に活躍できる人材になることだ。
しかし残念ながら、日本で日本人の両親から生まれ、日本の教育を受けて育つと、真の日本人にならない。一人娘をアメリカと中国の教育で育てたジャーナリストが、その経験を基に、日本人とは何かを問いかける。
日本の学校教育では、日本の歴史について深く知ることができない(撮影:尾形文繁)

自国の歴史を知らないで育つ日本人

この連載を始めてから、アメリカに留学中の学生から、たびたびメールが来るようになった。その内容はだいたい同じで、日本を離れて初めて「自分が日本のことを何も知らないことに気がついた」というのだ。

私たちが日本人であることは、日本にいると自明のことだから、自問自答することはない。しかし、いったん日本を離れて異文化の中で暮らすと、この当たり前のことが当たり前ではなくなってしまう。

以下のメールは、ボストンに留学したばかりの大学生から、つい最近、届いたものだ。

自分は20歳まで野球をやってきました。一昨年の夏、練習中に目にボールが当たり、それが原因で野球を辞め、思い切って留学している次第です。こちらに来てまだ2カ月ですが、日本にいたときよりも強く“日本”を感じています。
アメリカに来てから、日本のことを勉強したくなりました。歴史から現在に至るまで、日本について英語で外国人に伝えたい、良いことも悪いところも、知ってもらいたいと思いました。それは、みんな(自分も含め)日本に対して間違った認識があるからです。
そうするうちに、自分が日本についてほとんど知らないことに気づきました。
歴史からひもとかれる現在への軌跡を学び、これからわれわれ日本人がどうしていくべきなのかを、今、本気で考えています。

日本が低迷する最大の原因

私の友人にケン・ジョセフという在日アメリカ人がいる。彼は戦後、マッカーサーが「戦争で傷ついた日本人を助けるためにはボランティアが必要だ」という要請に応じて来日した牧師の息子だ。日本で育ち、現在、ボランティア団体を組織して、地震の被災者などの救援活動を行っている。

そんな彼がいつも言っているのは、「日本人は自分たちが誰なのか見失っている」ということだ。そしてこれが「今の日本が低迷している最大の原因」というのだ。つまり、彼に言わせると、日本人はみんな“迷子”だというのである。

「今の日本で何がいちばん悲しいかというと、若い人が自分の国に対して誇りが持てないことです。それは、大人たちが何も教えないからです。教えないで、若い人の悪口ばかり言っている。

迷子を助けるとき、いちばん大切なのは、自分がどこにいるか教えてあげることです。迷子になるというのは、自分が今どこにいるのか、周りがどうなっているのかがわからなくなるからです。

だから、いちばんいいのは、地図をあげること。あなたは、いまここにいて、ここからやって来てここに行こうとしています。周りはこうなっていて、道はこういうふうに続いています。そう教えてあげることです。そうすると、安心して、初めて歩き出すんですよ」

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