自国の歴史を知らず、“迷子”になる日本人 日本の原点は「多民族共生国家」

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このような経緯から、私は娘に、日本の原点は「多民族共生国家」だったと教えた。今で言えば、インターナショナル国家。この日本の地には、インターナショナル・コミュニティがあったのだ。

当時の日本には、中国や朝鮮半島はもとより、はるか中東からやってきたトルコ系の人々もいた。

 京都、奈良には、「秦」という姓の人が多い。この人たちは、古代のこの国に大量に渡来してきた中東からの人々、秦氏(「はたし」、「はたうじ」とも言う)の子孫だ。秦氏は弓月君に連れられて百済から帰化した中国系の人々で、機織りなどの技術で日本に多大な貢献をしたと言われている。しかし、前記したケン・ジョセフと彼の父は、長年にわたり研究した結果、秦氏のルーツは中央アジアのカザフスタンや、キルギスタンなどに行き着くとしている。

平安京はインターナショナル・シティ

秦氏で最も有名な人物が秦河勝。彼は聖徳太子に仕え、太秦に蜂岡寺(広隆寺)を建立したことで知られている。また、村上天皇の日記には「大内裏は秦河勝の宅地跡に建っている」と記されており、『日本書紀』などの記述から、秦氏一族は平安京の都づくりに深くかかわっていたことが知られている。

このようなことに思いを馳せると、平城京や平安京はインターナショナル・シティであり、街を歩けば、多くの外国人とすれ違ったはずだ。しかし、今の日本は内向きで、移民を受け入れず、あらゆる問題を日本人自身の手で解決しようとしている。

 娘のこともあっても、私は、「子供をグローバルな人間に育てたいが、どうしたらいいですか?」という相談をよく受ける。もっと端的に「将来、英語を話させたいので、そのためにはどんな教育をすればいいですか?」という相談もある。

そこで私は、「グローバル人材として大切なことは、語学力(英語)はもちろんですが、自分が誰か知っていること、そしてそれを表現できることです」と答える。つまり、ホンモノの日本人になることだ。

日本で日本人だけの中で育つと、同じ文化、同じ価値観が共有されるため、自分が誰かなど意識することはほとんどない。まして、それを表現することなどもっとない。“空気”を読んで行動するのが最も賢い生き方になる。

しかし、グローバル社会、多文化共生社会には“空気”など存在しない。徹底的に自分のこと(日本人であること)、そして、その価値観(なんのために生きているのか)を話さないと、相手には何も伝わらない。

そのためにはやはり、自分自身の歴史を知ることだ。

山田 順 ジャーナリスト

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やまだ じゅん / Jun Yamada

1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年『光文社ペーパーブックス』を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の両方のプロデュースも手掛ける。著書に『出版大崩壊』『資産フライト』『出版・新聞 絶望未来』『2015年 磯野家の崩壊』などがある。

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