自国の歴史を知らず、“迷子”になる日本人

日本の原点は「多民族共生国家」

アメリカの歴史教育は、各州によって違う。教育は日本のように文科省によって一括管理されていないので、学校によっても違う。それで、以下に記すことは、一般的な例として受け取ってもらいたい。

小学校低学年での主要4科目は、「ランゲージ」(国語=英語)、「マス」(算数)、「ソーシャル・スタディーズ」(日本の社会に相当)、「サイエンス」(日本の理科に相当)。このうち歴史教育は、「ソーシャル・スタディーズ」での中で行われるが、「国語」の中でも歴史的な読み物が出てくる。ただし、小学校4年生までは、歴史の時間数は他教科に比べて少ない。

小学校5、6年生になって、初めて「ヒストリー」(歴史)の教科書による歴史教育がスタートする。この教科書は、日本で言えば世界史で、人類がどうして誕生したか?から始まり、 エジプト文明、ギリシア文明を経て現代に至るまでの歴史が網羅されている。もちろん、後半は、アメリカの歴史が大半を占めている。

アメリカの歴史教科書は読ませる

私も娘の歴史教科書を読んだが、日本の歴史教科書と大きく違うのは、各章が非常によく整理され、イラスト入りで、読み物としても楽しめることだ。
 たとえば、「建国」(Building a New Nation)の章では、最初にこの章で習う「キーワード」(重要語句)と「キーピープル」(重要人物)が示され、「出来事表」がある。そして、「Read for Purpose」(読む目的)という項目があり、そこにはこう書かれている。

「How did the United States gain its independence from Great Britain?」(どのようにアメリカは大英帝国から独立を得たのか?)

これほど、覚えること、知ること、その目的を明確にした教科書はないだろう。

さらに驚いたのは、章の後には「復習」欄があり、また「Thinking Skills」(考える技術)として、その出来事がなぜ起こったか? 自分で考えるための方法も説明されていることだ。

このようにアメリカの歴史教科書は、ストーリーとしての歴史を明確に打ち出している。そしてそれは、よく読んでみると、英雄たちのサクセス・ストーリーである。独立戦争の英雄ポール・リビアー、初代大統領ワシントンなどの建国の父たち、リンカーン、ルーズベルト、キング牧師など、数々の英雄たちが「歴史をつくった」「歴史を変えた」というように書かれている。

また、アメリカの歴史のほとんどが、戦争の歴史であることに驚く。独立戦争から現在の対テロ戦争、アフガン戦争に至るまで、200年の歴史は、ほとんどが戦争の歴史なのである。これほど、戦争ばかりしてきた国は世界にはない。
そして、その戦争それぞれに目的がある。「自由と正義、そして民主主義のため」の戦いである。

つまり、アメリカの歴史教育には「ストーリー」と「何のために~(目的)」が明確である。しかし、日本の歴史教育にはこれがない。

ところで話は少しそれるが、欧米の歴史教育には、「日本史」というカテゴリーがない。「ローマ史」「イギリス史」などはあっても、日本という国を単独の歴史でとらえるような教科はない。同じように「朝鮮史」も「ベトナム史」もない。これらは皆、地域研究(リージョナル・スタディーズ)である。

彼らの歴史は、ギリシアから始まり、ローマ、中世、近代、現代へと続く「西欧文明発達史」であり、それ以外の世界はすべて「地域研究」であって、歴史という視点ではとらえていない。

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