TPP交渉7月参加へ、進む地ならし 一部農家は早くも「TPP後」をにらむ

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たとえば、全国に6000弱の生産者が存在する養豚業界。飼育頭数数千のメガファームの存在はざらで、コメなどと比べ、農業の中で大規模化と経営効率化が最も進んだ領域だ。日本養豚協会の志澤勝会長は「TPPに参加するなら、海外の生産者と競争できるように、高止まりする飼料や食肉処理などの規制緩和を進めるべき」と訴える。

コメ分野でも、国内消費量約800万トンの3分の1を使う中食・外食業界から「TPPでいくら騒いでも、肝心の国内消費が減っては何にもならない。規模拡大を進めて生産コストを下げ、もっと消費者のニーズに合った国産米作りを進めるべき」(日本炊飯協会の福田耕作理事)という声が上がる。

TPP参加に向けた安倍政権の動きを阻止できなかったJA全中は政治力の低下がささやかれる。今年7月に予定されている参議院選挙は、JAグループで農業政策を担う全中の存在意義を問う正念場でもある。

TPP後で思惑交錯

農業団体は今夏、参院選の組織内候補として、前回当選した山田俊男・参院議員を擁立する予定だ。山田議員が6年前に得票したのは約45万票。しかし、「今の全中にそこまで票を獲得する力はない。参院選でTPPを推進する自民党を支持するのかどうか。進むも地獄、退くも地獄だ」(農水省OB)。参院選はTPPと農業団体に対する世論の支持度合いを測るリトマス試験紙になる。

すでに自民党内では「TPP後」に向けた地ならしが始まっている。10日に開かれた党の農林関係の会合では、農林族幹部から「農業は関税で守っていくことが大前提。したがって今から関税撤廃した場合の国内対策に言及するとなると、相手国からつけ込まれかねない。そのうえで、仮に守れない品目が出た場合、国内対策を打つ必要があるだろうが、それは状況を見ながら対応する」という「本音」が飛び出した。

「TPPが来ようと来るまいと、日本の農業が抱えている問題は変わらない。TPPを契機に農業再構築の議論を進めるべき」(新潟県の大規模稲作経営者)。やる気のある農業生産者の視線はすでにTPP後に向けられている。

(撮影:Bloomberg via Getty Images =週刊東洋経済2013年4月27日-5月4日合併号

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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