ゾンビ議員?銅バッジ?「復活」当選は悪か
現在、日本の衆議院議員総選挙で採用されているのは「小選挙区比例代表並立制」と呼ばれる選挙制度だ。
選挙区から1人が選ばれる多数制の小選挙区部分と、政党に投票する比例代表部分から成る。重複立候補が認められており、小選挙区で落選しても、比例代表で「復活」する議員が出てくるが、復活当選は一般に評判が悪い。「ゾンビ」という形容がしばしばなされるし、政治家の間でも比例復活議員は「銅バッジ」などと揶揄されることがある。
しかし復活議員は、どのような混合制度でも低く扱われるわけではない。たとえば、混合制度を採り、重複立候補を認めるドイツでは、東西統一にも貢献したヘルムート・コール元首相が、小選挙区では実に4回も落選し、そのたび「復活当選」している。
日本とドイツの混合制度は、1人2票、小選挙区と比例代表にそれぞれ1票を行使する点では同じだが、その内容は大きく異なる。
日本の衆院選では、比例代表部分が独立していて、それに小選挙区の議席が追加される。一方、「小選挙区比例代表併用制」と呼ばれるドイツの制度では、基本的に、比例代表部分の結果から、全議席を政党に配分するのである。
小選挙区部分には、定数の半分が割り当てられており、ここで当選した候補は必ず議員となる。
大きな政党の場合、比例での得票から彼らに配分される議席数は、割り当てが少ない小選挙区での当選者数より多くなる。比例で得た議席を、まずは小選挙区当選者で埋め、不足分を、提出した名簿の順番で決めればいい。
複雑なのは、小さな政党で、小選挙区での当選者が、比例で配分された議席数より多い場合だ。このとき、小選挙区での当選者は当然議員になる。すると、議員数が定数を超え、超過議席が発生するのだ。前回のドイツ連邦議会選挙では定数598に対して622名の議員が選出された。
この制度ならば、コール首相のような大政党のリーダーは、名簿の上位に自身の名前を載せ、党全体のことを考えて、選挙運動に臨むことができる。
有権者も、自分たちの選挙区のことだけ考えるわけではない政党リーダーより、地元に密着する候補者を選択しがちだろう。全体としては、比例代表部分での政党間の競争を基本としつつ、小選挙区部分で地域の利益に配慮する制度と評価できる。
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