選挙制度改革"0増5減"より大きな対立 混合制度の意図せぬ効果、いいとこ取りの難しさ

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ドイツの選挙制度、「負の投票価値」問題とは?

ドイツの選挙制度について補足すると、実は最近の選挙制度改革により、この記事で取り上げた、全国単位で集計した比例票(第二票)の得票結果に基づく各政党への議席配分は、とりやめられる可能性があった。

ドイツ統一後に超過議席が著しく増加したことが、憲法の保障する投票価値の平等に違反すると認識されたためだ。

従来の制度では、まず全国単位で集計した比例票によって各政党に議席が割り振られた(①)。そしてその後、各政党で州ごとに獲得した得票に基づいて、①の議席を各州に配分した。

つまり、政党AがX州で配分される議席数は、政党AがX州で得た比例票数だけでなく、政党Aが他の州でどの程度得票したかにも依存する。ここで問題になるのが、本文で説明した超過議席、定数を超えた議席の発生だ。

ドイツの選挙制度では定数の半分を小選挙区当選者が占めることになっており、小選挙区での当選者は必ず議席を得る。よって、政党AがX州の5つの小選挙区で勝利したとすれば、言うまでもなく、政党AはX州で少なくとも5つの議席を確保できる。

このとき、比例票に基づいてX州に配分される議席が5であれば何の問題もないが、配分が4つの議席に留まれば、超過議席が1つ出現する。

仮に、全国で確定した政党Aの総議席数(①)が減らないまでも、政党AのX州への議席の配分が5から4に変わる程度に、X州における政党Aの比例票が減るとしよう。

そうすると、小選挙区の結果から確保された5つの議席のうちわけは、比例得票により配分された議席4つと、それを超える1議席分の超過議席となる。この超過議席の出現によって、全国での政党Aの議席数が、①の議席数から1つ増えることになる、という事態が生じる。

つまり、獲得する比例票が減少したことによって議席数が増えるという事態が起こりうるのである(このような現象は「負の投票価値」〈negatives Stimmgewicht〉と呼ばれている)。

これは非常に特殊な事態であるように見える。しかしドイツでは、統一後の超過議席の増加に伴って、このような事態が実際に起こる可能性が高くなっていると認識されるようになった。

そして、2008年7月の連邦憲法裁判所の判決で違憲判断が下されるとともに、2011 年6月までに合憲的な規定を設けることが連邦議会に要請された。

ドイツ国内では、裁判所が示唆した小選挙区比例代表併用制から小選挙区比例代表並立制(日本ではこちらの制度を採用しており、小選挙区と比例代表の議席数はそれぞれ固定している)への転換も含めた様々な議論が行われた。

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