25歳男性を苦しめる「貧困連鎖」という呪縛

就職は貧困から抜け出す好機だったはずが…

カツユキさんの願いはただひとつ。「労働条件が守られたところで働きたい」。当たり前の望みなのに、時折、底知れない恐怖にさいなまれる。「新卒でもない。2度も就職に失敗している。こんな僕にはもう2度と働ける場所なんてないんじゃないでしょうか」。

東京駅の周辺で話を聞き終わったとき、日はすっかり暮れていた。駅前の交差点。カツユキさんが、いわゆる「大手企業」が多く入るビル群の明かりを見上げながらつぶやくように言った。

「僕には手の届かない世界です。あそこにいる人たちはみんな日本のために、誇りを持って働いているんでしょうね」

苦しみ、戸惑い、自らの可能性を閉じていく

カツユキさんの願いはただひとつ。「労働条件が守られたところで働きたい」

彼の胸中に去来したのが、あこがれなのか、悔しさなのか。大企業で働く人々が皆、「日本のために誇りを持って働いている」のかどうか。どちらも私にはわからない。

いずれにしても、手が届かなかったことや、かなわなかったことが、貧しさのせいだと言い切れるならまだいい。だが、多くはカツユキさんのように、どこまでが貧困のせいで、どこまでが自らの能力と頑張りの足りなさが原因なのか判然としないことに、苦しみ、戸惑うのだろう。彼らには、希望に向かって頑張るだけでよかったためしなどないし、それゆえに成功体験も少なすぎる。そして、中には、自分でも気がつかぬうちに「頑張っても無理」「できなかった自分が悪い」と自らの可能性を閉じていく人もいる。

貧困の連鎖とは、静かなあきらめの連鎖でもあるのかもしれない。

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 賃金・生涯給料ランキング
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 世相をリアルに映し出す 流転タクシー
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
トレンドライブラリーAD
人気の動画
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
イオン「フジ実質買収」で岡田会長が語った未来図
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
採用担当者が嘆く「印象の悪い就活生」の共通点
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
ヤマト独走に待った!佐川・日本郵便連合の勝算
ヤマダ、社長離脱でにわかに再燃する「後継問題」
ヤマダ、社長離脱でにわかに再燃する「後継問題」
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
私大トップ校の次の戦略<br>早慶上理・MARCH・関関同立

受験生確保や偏差値で高い水準を誇る関東・関西のトップ私大13校。少子化や世界との競争といった課題に立ち向かうための「次の一手」とは。大きく揺れる受験動向や、偏差値や志願倍率と比べて就職のパフォーマンスが高い大学・学部なども検証します。

東洋経済education×ICT