
警備とコンビニのバイトを掛け持ちするリョウタさん(55歳、仮名)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

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午後10時すぎ、東京23区内のコンビニエンスストア。アルバイトを終えたリョウタさん(55歳、仮名)が大きな黒いビニール袋を提げて出てきた。ずっしりと重い袋の中には、消費期限が迫った弁当やおにぎり、巻きずし、サンドイッチ、シュークリームなど――。
「店長がいい人で。本当はダメなんですけど、毎回持ち帰らせてくれるんです。賄い飯みたいなもの。これのおかげでなんとか食いつないでいます」
そう言って笑うリョウタさんの顔色は悪く、目の周りが黒ずんでいる。夜間警備の仕事が明けた後、そのままコンビニ勤務に入ったことによる寝不足のせいなのか。それとも、ダブルワークを始めてから急激に悪化したという糖尿病のせいなのか。不規則なシフトのため、日中まるまる休めるのは月に1回ほど、1日の睡眠時間は3~4時間のこともあるという。
ノルマ、ノルマ、ノルマ
転職回数が片手では足りないというリョウタさんに、これまでに就いた仕事について尋ねると、こう切り出した。
「ノルマ、ノルマ、ノルマ――」
どこの職場でも無理なノルマをこなそうとして体調を壊したり、解雇されたりの繰り返し。50歳を過ぎて行き着いたのが、夜間警備とコンビニのアルバイトの掛け持ちだという。
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