ラミレスのそんな思考法や駆け引きについて、西武で清原和博、中島裕之などを育てた土井正博元打撃コーチがおもしろい表現をしていた。
「ラミレスは相手ピッチャーに、自分が打ちたいところに投げさせている」
この話をラミレスに伝えると、彼は“種明かし”をしてくれた。
「相手ピッチャーが自分の苦手なところではなく、得意のコースに投げてくるようにボールを待つこともある。たとえば無死2塁なら、普通のバッターなら右方向を狙う。逆方向に打ったほうが、3塁にランナーを進める可能性が高いからね。ただ、自分は外角の球を狙って打つのではなく、内角の球を待つ。なぜなら、相手は外角に投げづらいからだ。外角の球なら、右方向に簡単に打ててしまうからね。だから、あえてインサイドの球を待つ。それとよく使う手は、初球を見逃すことだ。初球にカーブが来たら、次はおそらく違う球種がくる。日本のピッチャーは、同じ球種を連続で投げるのはあまり好きではないからね」
つまり、冷静に状況を把握し、相手の心理を見極めるということだ。敵の狙いを読み切ったうえで、思い切り自分のバッティングをする。それが土井コーチの表現を借りると、「自分の打ちたいところに投げさせている」となるのだ。
試合後も、家でバッティングを確認
ラミレスが優れるのは、相手との駆け引きばかりではない。日々の準備を抜かりなく行い、万全の状態で試合に臨んでいるからこそ、来日から12年連続で好成績を残せている。
どんなに疲れていようと、ラミレスは日々のルーティンワークを怠らない。試合後は家に帰り、録画した映像で自身の打席でのスタンス、ホームベースとの距離、体のバランス、腕の位置、スイングの角度、ボールを芯で捕らえられているかを確認する。翌日の試合前までに相手バッテリーの配球を頭に入れ、球場に着けばウエイト・トレーニング、ランニング、キャッチボール、バッティングといつも同じように準備する。そうしたルーティンワークで準備しているからこそ、つねに結果を残すことができるのだ。
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