一般的に高い打率を残すためには、左右に打ち分けるのが打撃の基本とされる。だが、求められる技術が高く、誰にでもできることではない。
ラミレスが広角に打つことを可能にしたのは、技術と、筋道を立てて考える力があったからだ。筆者が『Baseball Times』で行ったインタビューで、ラミレスはこう答えている。
「右に打とうとする打者は、どうしても右を狙って打とうとしてしまう。でも右を狙って打つのではなく、ボールをしっかり引き付けてたたくことで、結果的に右方向への打球になる。右に打とうとして打つと、ファウルボールになってしまう確率が高い」
「右に打とう」と考えるだけでは、まだ漠然とした意識を持っているにすぎない。もっと細部まで突き詰め、自分の狙いを徹底することが重要になる。プロセスを明確にすることで、狙った結果にたどり着くのだ。
捕手のリードを徹底研究
ラミレスが続ける。
「ボールをどこで打つかが重要だ。内角のボールでも内側からたたけば、右方向に打球を打てる。左方向に引っ張ろうとしたら、体の前の方で捕らえないといけない。右方向に打つ場合、しっかりボールを引き付けて、内側からボールをたたく意識が重要だと思う。打席によって、どこに打とうかと意識することも重要だ」
来日から数カ月、ラミレスは凡退を繰り返した。自分はなぜ、打てないのか。そう考えているうちに、日米の違いに気づいた。
アメリカでは、バッテリー間で配球の主導権を握っているのは投手とされる。投手は捕手のサインが気に入らなければ、簡単に首を横に振る。だが、日本では捕手がサインを送り、投手がそのとおりに投げるのが一般的だ。ラミレスはその事実に気づき、思考と行動を変えた。相手投手の攻め方ではなく、捕手のリードを研究し、狙い球を絞ることにしたのだ。
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