誤った“顧客志向”に走る、困った人々 感謝されたいのはわかります、が……

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顧客志向は重要ですが、職場に迷惑をかけて、さらに収益も得られないような仕事まで果たしてやるべきなのでしょうか?

顧客志向は商品やサービスという、自社本来の役割で相手を満足させることであって、顧客からの無理難題をすべて聞き入れる「何でも屋」になることとイコールではありません。「NO!」と言えないまま、なし崩し的に相手の要求を受け入れて職場に迷惑をかけていい……なんて道理は存在しません。

そもそも、なぜそこまで過剰な顧客志向になってしまったのでしょうか?

・あまりに実直すぎる

ことが原因かもしれません。ちょっときつい言い方かもしれませんが、自身の気の弱さ・判断力の欠如を、顧客志向で正当化している場合もあるでしょう。

 本来、顧客志向であることには前提条件があります。いただいた対価に対して高い満足度をいただくため、お客様の声に耳を傾けるものです。お客様ごとに提供できることには違いがあり、限界があります。例えば、

・赤字でもご要望どおりのサービスを提供する

などということはありえません。例えば、既製品のスーツを販売するスタッフが、お客様からオーダーメイドのスーツと同じレベルの要望をいただいたとしましょう。もし、その無茶な要望に応えては、原価割れしてしまいます。そういう場合は、

「そのようなご要望にまでは、お応えできかねます。オーダーメイドのスーツをご注文いただいたほうがよろしいかと存じます」

と、対応すればいいのです。

仮に、“顧客志向”のスタッフが反論してきたら、

「社内リソース(人材・態勢)で対応可能か、関係者への確認は必要だね」
 「ご要望に応える範囲にも限度がある。その線引きも仕事じゃないかな?」

と、困った仕事に巻き込まれないように、アドバイスしてあげてはどうでしょうか? 最後に、本当の顧客志向を標榜するなら、お客様の声に耳を傾け、要望に応えるだけでは十分ではありません。ソリューション型(仮説提案)の仕事にまで進化させたいものです。


 

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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