誤った“顧客志向”に走る、困った人々 感謝されたいのはわかります、が……

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お客様の要望だから、仕方がない?

ついに1人の先輩社員が、その彼に注意をしました。無茶な仕様変更を平気でやる態度に「やっていられない」と、商品部からクレームが来たのです。そこで、仕事中にGさんに声をかけて

「無理な要望をぶつけてばかりいると、自分が損することになるぞ」

と、行きすぎた顧客志向にブレーキをかけてもらおうと、やんわりと注意をしました。先輩社員は、意図を理解して「以後、気をつけます」と反省の言葉が返ってくると思っていました。ところが、返事は想定外のものでした。

「お客様のご要望なのだから、仕方ないじゃないですか」

と、平然としています。むしろ、注意した先輩に「本質がわかっていない」と言い放つ始末。こうなると先輩もお手上げ状態です。周囲から総スカンを食らうのも時間の問題でしょう。

こうした顧客志向の呪縛に陥って、職場を混乱させるのは営業職だけではありません。例えば、システム会社でエンジニアをしているSさん(28歳)は収益を度外視したサポートを特定のお客様から要求されたのですが

「期待されているのであれば、応えなければいけません」

と、必死で業務に取り組みました。ただ、Sさんはこのお客様以外にも顧客を担当しています。当然ながら残りの業務はおろそかになり、一緒にかかわるエンジニアが代わって対応することになりました。そこでチクリと

「顧客志向も、大概にしてほしいよ」

と指摘したところ、Sさんが烈火のごとく怒り出しました。

「お客様の期待に最大限応えることが、わが社のビジョンではないですか。間違った指摘は勘弁してください」

思わず、職場に重い空気が流れました。このようにアカウント(売上数字)を持っていないエンジニアが顧客志向にハマりすぎて、周囲に迷惑をかけることもよくあるようです。

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