誤った“顧客志向”に走る、困った人々 感謝されたいのはわかります、が……

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「お客様のご要望に応えて、感謝されることにやりがいを感じています」

と答えてくれたのは広告代理店に勤務しているSさん(24歳)。イマドキの若手社員は、お客様に感謝されることが大好きのようです。日本生産性本部が調査した平成24年度新入社員「働くことの意識」調査によると、「感謝される仕事をしたい」と回答した人が95%を超えました。

ただし、こうした傾向は10年以上前から継続しているもの。顧客志向の高い人は、堅調に増加しているのです。そんな、お客様からすれば「ここまでやってくれるとはありがたい」と感謝される存在の人。ただ、理想的なようで、職場の同僚にすれば、

「外面がよいのはいいけど、社内に迷惑かけないでくれ」

と思われていたりします。取材した建材メーカーにも、職場を混乱させる困った顧客志向の社員がいました。営業部門の所属している若手社員のGさん(28歳)。周囲の同僚からすれば仕事にならない(つまり、売り上げにつながらない)仕事に振り回されて、そのツケを周囲にまき散らすのです。

職場の先輩社員に聞いたところ、お客様からたびたび呼び出されて、再三にわたる見積もりの提出や納期の見直しなど、さまざまなことを要求されているようです。

営業であれば、多少の無茶な要求には応えざるをえないこともあります。ときには目先の売り上げにこだわらずに、お客の要望に耳を傾けて「売り上げにならない仕事」もこなすことはあるでしょう。

ただ、Gさんの行動は限度を超えていました。お客様の要求に応えるために社内の営業アシスタントに対して「見積もりは今日中に送ってくれ」と深夜残業を強いることがたびたび。また、納品直前での仕様変更を平気で行うため、周囲の人々が振り回されることが頻繁に起きていたのです。しかも

「お客様の要望に応えなくては……」

を合言葉のように連発し、周囲を巻き込もうとします。無理、無茶な業務の依頼で周囲は怒りがこみ上げる日々。それでも、関係者に「いろいろ無理をお願いしてすみません」と気配りがあれば、多少はよかったかもしれません。ところが、そんな気配りはゼロ。逆に「やって当たり前」という態度なので、周囲の怒りは増幅していきました。もちろん、顧客志向という信念がそうさせているのですが……。

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