拳銃片手に街歩き? 体当たり"実験"アート

メキシコシティを、アリスと歩く

それまでアリスが親しんできたヨーロッパの都市は、中世以来、城壁から動物や余計なものを排除し、整然と管理する方向で発達してきた。ところがメキシコシティには野良犬がゴロゴロしているばかりか、人間もあちこちで昼寝している。しかも物があふれ混沌としていた。彼の目にはそれが豊かなものに映った。

最初は一人の観察者として一定の距離をおいて都市を見ていたが、だんだんと介入するようになり、働きかけ、ときには批判的にもなっていった。

「都市ともっと即興的に、スピーディーに、直接的なかかわりを持つことができないかと考えたら、アートになった。建築はクライアントや予算との妥協が必要なので、時間がかかります。アーティストは短時間に、正確に、狙いどおりのことができるのです」

それでも、竜巻の中心が見てみたい

メキシコと出会えて幸運だったというアリスは、「30歳でアーティストになってよかった。もう20年間やってきたから、また別の仕事をしてもいいかな。迷っている人は、Don’t wait, just do it! リスクは想像しているほど大きくないと思うよ」と言う。

『愛国者たちの物語』 1997 年、メキシコシティ ラファエル・オルテガとのコラボレーション アクションの記録映像 24 分40 秒 映像スティル
メキシコシティの中心部、ソカロ広場で羊を連れて歩くアリス。詩的な映像の裏に政治的な事件の影が秘められている

そのほかの作品では、詩的な映像が強い印象を残す『愛国者たちの物語』、そして『トルネード』が面白い。

『トルネード』 2000-10年、ミルパ・アルタ アクションの記録映像 Photo:Jorge Golem
竜巻の中心部をとらえようと、アリスはビデオカメラを手に竜巻に飛び込んでいく

アリスは竜巻の中心部をとらえようと、ビデオカメラを持って、何度も何度も竜巻に突っ込んでいく。10年にわたって竜巻に飛び込み続けた。理想を求めて困難に向かっていく人間の姿は、感動的でもあり、滑稽でもある。

次ページ社会的な問題に、”詩的”に迫る
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