右手に拳銃を持ち、サングラスをかけて街をうろつく怪しげな男性。ベルギー生まれ、メキシコ在住のアーティスト、フランシス・アリスだ。日本で初めての個展が東京都現代美術館で開かれている。
アリスは、都市を歩いて見えてくる社会や政治の問題、人間の内面を取り上げる。街の中で、ウィットに富んだアクションを行ってテーマを浮かび上がらせ、それを映像や写真に記録してきた。ロンドンのテート・モダン、ニューヨークの近代美術館でも過去に個展が開催されている。
彼のアクションは、体を張った危険なものも少なくない。『再演』もそのひとつだ。アリスは店で拳銃を購入し、そのままメキシコシティの街を歩く。拳銃を手にした男が街を歩いたら、いったい何が起きるのか。観客はハラハラしながら物語の行方を追う。やがてアリスは警官に取り押さえられ、パトカーで連行される。
そのドキュメンタリー映像のすぐ横に、もうひとつの映像が流される。ドキュメンタリーを撮った後、アリスがまったく同じ状況を再演した映像だ。拳銃はモデルガンに変えられている。しかし、2つの映像はほとんど区別がつかない。現実とフィクションの違いはどこにあるのか見る人は問われることになる。
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