ただし、若年性乳がんは、発見されたときに免疫をつかさどるリンパ節に転移した状態で見つかることが多く、進行は比較的早いと考えられている。また、乳がんは女性ホルモンの影響を受けやすく、それを遮断するホルモン療法が行われるが、若年性乳がんでは効果がないことも珍しくない。さらに、がんの分子を狙い撃ちにする分子標的薬で効果がないケースもあり、抗がん剤による治療が行われるのが一般的だ。近年、抗がん剤には効果的な吐き気止め薬が登場し、体力の低下は防ぎやすくなっているが、髪の毛が抜けるといった副作用は依然としてある。
「当センターでは、早期がんで見つかり手術のみで薬物療法が不要となった若年性乳がんの患者さんは多い。また、乳房温存よりも乳房の切除と再建を選択する方は増えています。日本乳癌学会の34歳以下の5年生存率は89.8%で、35歳から50歳の94.5%と比べて低いのですが、決してあきらめるような状況ではありません」
大野センター長は、若年性乳がん患者が、手術後に再発予防の治療を受けつつ妊娠や出産ができるようにするため、世界的な共同研究にも参加している。
定期的な自己触診が早期発見のカギ
がん研有明病院乳腺センターの30代の乳がん患者の約6割は、自分でしこりに気づくなど、自己発見で受診している。大野センター長によれば、国内の乳がん患者の約8割は、自分でしこりに気づいているそうだ。そのため、定期的に自分で触って調べる触診が重要になる。その方法を大野センター長が教えてくれた。
「40歳以降の女性は、乳がん検診を受けることが大切ですが、30代の方は、ご家族やご親族に乳がんや前立腺がんなど、性ホルモンや家族性の遺伝子変異にかかわるがん患者さんがいなければ、その必要はありません。30代の乳房は、高密度乳腺といって、乳腺を調べるX線のマンモグラフィーではがんを判別しにくい場合が多く、被曝の問題もあるからです。定期的な自己触診により、異変があったときには乳腺外科医がいる医療機関を受診するように、心掛けていただきたいと思います」と大野センター長はアドバイスする。
がんは今のところ誰にでも起こりえると考えられるだけに、自己触診を忘れずに。
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