「がんだから会社を辞める」は、もったいない 正しい理解と制度があれば治療は両立できる
「がん」と聞くとどんなことが脳裏に浮かぶだろうか?
「不治の病」「闘病生活」「苦しい副作用」「死」――。がんに対してそんなイメージを抱いている人は少なくないだろう。確かにがんは30年以上にわたって日本人の死亡原因の第1位で、年代別でも50歳代以降はどの年代でも、がんによる死亡者数が最も多い。一生涯のうちに男性の約62%、女性の約46%が罹患するというデータも存在する(2011年)。
うまく付き合う病気になりつつある「がん」
だが、近年の医療の発達はめざましい。がんによる入院日数は以前と比べても減少し、通院で治療が可能になってきている。治療効果が大きい薬剤も多数登場しているうえ、抗がん剤の副作用を抑える治療法も大きく進化している。
週刊東洋経済は6月4日号(5月30日発売)で「がんとお金」を特集。がん治療と両立における課題と処方箋に迫った。がんの5年生存率は毎回上昇しており、全国がんセンター協議会の調査による最新データでは68.9%。今年1月に発表された「10年生存率」では58.2%となっており、10人中6人は10年以上生存という結果が出ている。10年生存率を部位別に見ると、たとえば乳がんの1期と2期、大腸がんの1期と2期で80%を超え、胃がんの1期では90%を超えている。
がんはもはや不治の病などではなく、「治る病気」「うまく付き合う病気」になりつつあるのだ。「がんは糖尿病や高血圧と同様に、慢性疾患と考えるべき」という医師もいるほどだ。
一方で、がんに罹患して会社を辞めてしまう人は少なくない。2013年の「がんの社会学」研究グループの調査によると、がんと診断されて会社を辞めた人は全体の約3割に上った。これは10年前の同グループによる同様の調査と比べても変化がなかった。
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