「がんだから会社を辞める」は、もったいない 正しい理解と制度があれば治療は両立できる

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従業員数が数千人から数万人の大手企業では、がん患者が活用できる就業規則や産業医の配置も万全なところも少なくない。だが、問題はこうした就業規則がほとんど整備されていない上に、産業医もいない中小・零細企業だ。がんと診断されて、本人は仕事を続ける意欲があっても、会社から「ノー」と突き付けられたり、就業規則上で治療と仕事の両立がかなわなかったりして、退職に追い込まれる人も多い。

がんでも使える時短勤務などの就業規則があれば

東京女子医科大学医学部の遠藤源樹助教が、2000~2011年の12年間にわたってがん患者約1200人を対象に実施した調査では、がんでも使える時短勤務など就業規則が整備されている大企業では、がんによる離職はわずかに3%という調査結果も出ている。「就業規則が整備されていない中小企業では、がんになって会社を辞める人は5割を超えているのではないか」と遠藤助教は言う。

がんは入院を最小限に抑えて、通院での治療が増えている。たとえば抗がん剤治療や放射線治療など、半日だけ休みをとって、治療に行けるような制度があれば、仕事との両立もしやすい。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「がん治療と仕事の両立に関する調査」によると、がん患者が企業に求める支援の上位には「出社・退社時刻を変えられる仕組み」「1日単位の傷病休暇の仕組み」「時間単位や半日単位で休暇取得できる制度」などが並ぶ。

つまり、時短勤務制度や時差勤務制度などを、がんなどの私傷病の治療でも適用できるようにすれば、業務にそれほど大きな影響を与えることなく治療に臨むことが可能になるだろう。さらに、もう一つのポイントになるのが、企業の「産業保健スタッフ」の活用だ。産業保健スタッフとは50人以上の従業員に配置が義務づけられている産業医や産業保健師のことで、従業員の健康管理に対して重要な役割を担う。これらの産業保健スタッフが常駐し、従業員がいつでも自分の健康や病気のことについて相談できる体制が望ましい。

高見 和也 東洋経済 記者

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たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

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