「がんだから会社を辞める」は、もったいない

正しい理解と制度があれば治療は両立できる

なぜ、がんになると会社を辞めてしまうのか? この答えを解くヒントとなる調査結果が昨年実施された。2010年度から「がんと就労」の問題を追いかける国立がん研究センター・がんサバイバーシップ支援部長の高橋都医師を中心とする研究グループによると、「がんで退職した人は約2割、そのうち約4割は"最初の治療が始まる前に会社を辞めている"」という驚くべき結果となった。

つまり、がん治療が始まって仕事との両立が困難になり、辞めるのではなく、がんと診断されたことで、ショックを受けたり、驚いたりして仕事が続けられないと判断してしまう人が多いということだ。実際に同調査では、辞めた理由に「身体的に無理」「会社が対応してくれないだろう」という自己規制的な回答が並ぶという。

これらの理由は、2013年の「がんの社会学」研究グループの調査結果でも見られた。会社を辞めた理由として、「仕事を続ける自信がなくなった」「会社や同僚、仕事関係の人々に迷惑をかけると思った」など、治療以前に、周囲との関係を気にして会社を辞める人が多いのだ。

確かに、治療に専念するために会社を辞めざるを得ない人もいるだろう。だが、治療をしながら仕事を続けることができるかもしれないのに、早々に会社を辞める決断を下してしまうことは実にもったいない。がんで会社を辞めれば半数以上の人が年収を減らしているうえ、正社員で辞めた人は再就職しても実に4割は非正規雇用になってしまうというデータもある。高齢化社会の進展で就労可能人口が減っていくでも、がんによって貴重な人材を失うのは社会的にも大きな損失だ。

ではがんによる離職を防いで、仕事とがん治療の両立を実現するために企業に求められることはどんなことだろうか。

周囲の理解と…

米国などでは、がん患者が治療を終えて会社に復帰してきた人に、困難ながん治療を経て戻ってきたことに対して敬意を込めて、職場の人が拍手で迎えることも多いという。たとえば企業内研修によって、がんに関する正しい知識を啓蒙していくことで、「がん=死」「がん=不治の病」などといったつらく厳しいイメージを和らげていくことができる。がん罹患者に対して周囲の理解が深まれば、少なくとも周りの人に迷惑がかかるなどの理由で会社を辞める人が減るだろう。

ただ、周囲の理解が進むだけでは不十分だ。がん罹患者が治療をしながら、仕事を続けるためには、がん治療と仕事の両立が可能な就業規則が備えられてなければならないだろう。

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