対するアルゼンチンも状況は同じである。2002年にデフォルト(債務不履行)となった同国債の償還額をめぐり、ヘッジファンドが提訴したニューヨークでの訴訟の行方いかんでは、キルチュネル政権は巨額の債務の一括返済を求められ、破産せざるを得なくなる危険性が高い。
強烈な円の反転上昇リスクの可能性を認識せよ
そうなった場合、このリスク炸裂は一方においてイタリアへ、他方ではアメリカへと飛び火していくことになる。なぜならば前述の「デフォルト」となったアルゼンチン国債の多くを依然として抱えているのはイタリアであると考えられるからであり、同時にアルゼンチンに大量の直接投資をしてきたのはアメリカだからだ。
米欧の結節点とでもいうべきアルゼンチンの抱えるリスクが炸裂することにより、イタリアとアメリカからの資本の逃避が始まることとなる。ユーロ米ドルは共に暴落し、強烈な円高が到来する。
ここで仮に中東における地政学リスクが相前後して崩落したらどうなるか。たとえばシリアのアサド政権が保有していたはずの大量の化学兵器は、レバノンに展開するイスラム系武装組織「ヒズボラ」の手にわたっていることを、5日に行われた国防相会談でアメリカはイスラエルに伝達したとされる。化学兵器の使用を恐れるイスラエルが先制攻撃に出た場合、「ヒズボラ」を支持するイラン・シリアとの間で全面対決となるはずだ。やがてそれは中東全域を巻き込む戦いへと発展し、「中東大戦争」の中、原油価格は急騰するのである。
「ユーロ崩落・ドル暴落のダブルショックによる円急騰」と「原油価格の急騰」で日本株マーケットは間違いなく大暴落となる。その一方で「核兵器」をめぐるアメリカとの交渉を有利に進めたい北朝鮮が「核弾頭を搭載した長距離弾道ミサイルの発射」を同時にちらつかせ始めるならば、こうした暴落に一層の拍車がかかっていくことになる。シリアと北朝鮮は無二の友好国だ。北朝鮮はこの意味で「最も都合の良いタイミング」を選んで動くはずなのである。
ほかにも、同時連鎖して炸裂する危険性の高いリスクは多々あるが、このへんで止めておく。だが大事なことは、仮にそう遠くない将来にこうした複合的かつ同時多発的なリスク炸裂となった場合、安倍晋三政権は間違いなくさらなる量的緩和・金融緩和へと踏み出すということなのである。世界中のリスク炸裂を受けて、むろん「円急伸・日本株暴落」となる。だが、その後どうなるのかといえば程なくして日本マーケットは復活し、むしろ「日本バブル」として、その後に名を残すほどの歴史的な高騰局面が見られるはずなのである。複合的かつ同時多発的なリスクの炸裂という、コンピュータ上のアルゴリズムにとっては想定外の事態に見舞われ、巨額の損失を被ったマーケットの猛者たちは、今度は一転して再起動となるこの第二の平成バブルを、よってたかって押し上げていくことになる―――。
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