円高は終わり、「長期円安時代」が到来へ

市場動向を読む(為替)

筆者は「95円程度までのドル高円安は過去に歪められた価格水準の是正であり、むしろファンダメンタルズへの回帰である」と主張してきた。日米金利差の絶対水準などから見て、違和感のない水準であるからだ。実際、3月前半、ドル円は1ドル=96円台へ上昇したが、その分、価格正常化の動きはそろそろ収束するころだと思われる。ドル円は100円を達成する前に、いったんは調整反落局面入りするのではないかと筆者は考えている。

ただし、長期的な観点からより重要なのは、今回、日米政策金利差が0%という金利環境下で、ドル安円高が止まったことである。それどころか、2011年10月の75円台のドル円最安値から、足元は実に20円を超えるドル高円安が進行してきた。1971年の金ドル交換停止(ニクソンショック)以降、一度も経験したことがない現象である。正に歴史的な円安が進行してきたといえる。

円安を促す3つの構造要因

筆者が見るところ、今回のドル高円安の背景には、3つの構造変化が横たわっている。つまり、(1)高齢化などの人口動態、(2)日本の生産性低下、(3)グローバル化といった構造問題が国際収支を悪化させやすくしており、長期的な円高に歯止めをかけ、円安圧力さえ生み始めている。

このうち、もっとも直接的に国際収支を悪化させているのは(1)高齢化であろう。統計上、経常黒字は家計、企業、政府という3つの経済主体の純貯蓄の合計額と一致するが、このうち、家計の貯蓄率は65歳以上の年金世代比率と極めて高い相関を有する。現役世代に比べ、年金世代の貯蓄率が顕著に低いためだ。

折しも、昨年からは団塊の世代の公的年金の受給が始まっており、向こう5年ほどで家計貯蓄率の低下は一段と加速する可能性がある。近年、企業の余剰貯蓄が増加傾向にあるものの、家計貯蓄の減少を相殺するには至っておらず、日本全体の純貯蓄の減少、即ち経常黒字の減少につながっているのである。

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