決算短信に掲載されている「地域ごとの情報」によると、日本の売上高は全体の売上高の72.9%を占めています。つまり、花王はユニ・チャームに比べて日本の比率が高いのです。こうした点からも、花王はユニ・チャームよりも、消費税増税の影響を受けやすいと言えます(下表)。
もちろん、これからアベノミクスが功を奏して景気がよくなってきて、消費税率が上がっても吸収できるほど名目GDPが上がり、現金給与総額が増えれば、増税分を価格に上乗せしても問題はありません。
しかし、この20年間以上、名目GDPはほとんど伸びていないことを考えれば、給与がこの先順調に伸び続けるのは、実際にはかなり難しいと考えられます。増税後は両社に限らず、小売製品、特に日用品を扱っている会社の売り上げや利益にどのような影響が出てくるのかという点を、注視することが肝要です。
政府は、消費税増税の影響をもっと説明するべき
アベノミクスでは、名目成長率の成長目標を3%に置いています。デフレ脱却のために物価目標を2%に設定していますから、それを吸収すべく、給与の源泉である名目GDPの成長率を3%まで伸ばそうとしているのです。ただ、ここで消費税増税の問題はあまり考えられていないのではないかと思うのです。
うがった見方をすれば、消費税増税についてわざと議論から外しているのではないかとも感じます。先程もお話しましたように、消費税率を上げても、名目成長率3%を維持できれば、どこかで消費税増税分を吸収することができるでしょう。しかし、この20年間以上、日本の名目GDPはまったく上昇していないのです。
一時的に公共投資や金融政策によって成長率を押し上げることができたとしても、3%の名目成長を継続させることはかなり難しいというのが現実です。少子高齢化が進んでいることから、社会福祉費が年間1兆円ずつ膨らみ、財政赤字は年々深刻化していきます。その中で、巨額の財政支出を続けることはできません。
さらに安倍政権は、今年6月に成長戦略を打ち出すと言っていますが、即座に効果が出るものでもありませんし、効果が現れるまで景気を浮揚し続けることができるかもわかりません。
こうした中で消費税を増税してしまいますと、企業も給与所得者も厳しい状況に陥るのではないかと思います。現状の日本の貯蓄率は3%程度ですから、限界消費性向(収入が普段より新たに増えた場合の消費に充てられる割合)は、約97%で可処分所得が増えないかぎり、消費税が上がった分だけ直接消費に影響します。今回分析した2社の業績は非常に安定したものですので、消費税が上がったとしてもすぐに経営が厳しくなるということはないでしょうが、こうした影響が徐々に現れてくるのではないかと懸念しています。
政府はアベノミクスばかり主張するのではなく、消費税増税が企業や個人に与える影響も説明すべきではないでしょうか。
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