「国語力」を磨けば、日本の理系は世界で勝てる 「舌先三寸」のアメリカ人に負けて気づいたこと

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MITの「国語教育」

では、アメリカの大学では「国語力」はいかに訓練されているのか。MITのケースをお話しよう。

日本の大学との違いは主に2点ある。1点目は成績の評価基準の違い、そして2点目は、ライティングにおけるサポート体制の違いだ。

まず1点目だが、MITの試験ではほとんどの問題が記述式で、記号選択式のものは少ない。また、博士課程への進級試験に当たるqualifying examでは、「口頭試問」という形式の試験も行われる。問題を渡され、解く時間を30分ほど与えられた後、一人ずつ部屋に呼ばれ、先生の前で解き方を板書と口頭で説明するという形式である。

そもそも成績評価における試験の比重が低い。代わりに、毎週の宿題やリポートが大きな比重を占める。もちろん、これも記号選択式のものはまれである。

「ファイナルプロジェクト」で成績が評価される授業も多い。つまり、自分でテーマを設定し、授業で習った知識やスキルを用いて研究を行って、その成果をプレゼンテーションとリポートで発表する、というものである。プロジェクトはチームで行われることが多いから、チーム内でのディスカッションも不可欠となる。

最後に、リーディング、つまり読書課題の量が非常に多い。英語の教科書は右の写真にあるように分厚いものが多いのだが、これがひとつの授業で1学期間に読まされる標準的な量である。

次に2点目の、ライティングのサポート体制について述べたい。MITにはWriting and Humanistic Studiesというプログラムがあり、50人程度の教員とスタッフを雇っている。毎学期30程度のライティングの授業が提供されており、MITの学生なら誰でも受講することができる。内容は、科学技術論文用のライティングはもちろん、修辞学から小説執筆や詩作まで、バラエティに富んでいる。

また、MITの大学院に入学した学生は全員ライティングの試験を課せられ、点が悪いと指定されたライティングの授業を取ることが必須となる。その授業で一定の成績を取ることが修士・博士課程の卒業要件となっている。

さらに、Writing and Communication Centerが設置されていて、文章の添削サービスを提供している。僕も計400ページにわたる修士・博士論文の一言一句をここで添削してもらった。ただ添削するだけではなく、帰納的にライティングスキルをその場でマンツーマン指導してくれるから、勉強にもなる。このサービスもMITの学生は無料で受けられる。

ただし、MITがこのような手厚いサポート体制を敷けるのは、年間約400万円もの高額な学費を取っているからであることも付言せねばならない。そして、学生たちが学費の工面に困らないのは、前々回の記事で書いたように、RAやTAなどの仕組みでほとんどの大学院生が学費を払わずに済んでいるからである。

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