ただ、時代の空気は確かにアマゾン側にくみしているだろう。これまではマージンが高いことを自慢し、自分たちの優雅さを喧伝するようなビジネスがたくさんあったが、昨今の景気後退を経て、人々の企業を見る目は変わった。
企業がどれだけ無駄なく運営され、消費者にいいものを安く提供できるのかを、人々はもっと鋭い目で見ているのだ。そんな努力をしない企業に、無駄なカネは払いたくない。
重役でも、座席はエコノミークラス
ベゾスは、社内でも徹底した効率主義と倹約主義を通している。日本語の「ムダ」という言葉まで使っているそうだ。そして「ムダ」を排除するために、あらゆるディテールに目を配る。社員の出張も、重役レベルですらエコノミークラスだ。シリコンバレー企業のような社員への手厚い優遇制度はなく、アマゾンの業績によって利するストックオプションのみ。
ミーティングではデータを重視し、データに基づいて発言することを求める。そして、データが示すどんな細かな兆候も見逃さない。ベゾス自らが顧客のフィードバックに目を通していることもよくあるという。
また、戦略を立てる際には、管理職に6ページの筋書きのある文章を要求する。あいまいな希望ではなく、しっかりとした思考と見通しがそこにあるかどうかを確認するためだ。新しく雇い入れる社員にも、具体的な行動プランを書かせるという。
そうしたキチキチとしたやり方を求めながらも、ベゾスは基本的にはビジョナリーである。一方では厳しいマイクロ・マネジャー、もう一方では未来を見通す天才。そんな異質なものが一人の人間の中に共存していることが興味深いのだが、アマゾンのこれまでの発展を振り返ると、そのふたつがあってこそ成り立ってきたものと言える。
最初は、本というたったひとつの商品から始めたが、現在は電気製品、日用品、ファッション、ジュエリー、そして自社製タブレットまで、取り扱う商品は数十のカテゴリーに及んでいる。加えて、映画や音楽のエンターテインメント・コンテンツをインターネット経由で提供したり、企業向けのクラウドサービスにも進出したりている。
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