「マイクロソフトの新しいタブレットを使ってみたけれど、何か昔のガールフレンドを思い出したよ。頭の回転が良くて美しい。でも、あんまりにもややこしくて、訳がわからないんだ」。
ツイッターで、マイクロソフトをそうハチャメチャにこき下ろしているのは、マーク・ベニオフ。世界にクラウド革命を巻き起こした張本人であり、シリコンバレー最後の大型CEOともささやかれる男である。
彼はただユーモラスな表現に長けているだけではない。ふたつの面で現代のリーダーとしての資格を備えていると言える。
ひとつは、新しいテクノロジーのあり方を、他の誰よりも先駆けて世に問うたこと。もうひとつは、企業を単なる利益追求のための組織から、社会貢献を統合した行動体としてとらえ直したことである。
まゆつばと言われた”予言”が現実に
シリコンバレーでベニオフを知らない人間はいない。大柄の長身、人なつこい表情。ちょっとテディベア(クマのぬいぐるみ)のような外見だが、彼が創設したセールスフォース・ドットコムは現在、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を続けている。ビジネスマンとして一級の、先見の明の持ち主なのだ。
1999年にベニオフがセールスフォースを設立したときの売り文句は、「ソフトウエアの終焉」だった。そのソフトウエアというのは、デスクトップのコンピュータや企業内のサーバーにインストールして使うソフトウエアのことである。
なぜ、そんなソフトウエアが終焉を迎えるのかというと、これからはインターネットに接続して、その状態でソフトウエアを使うことになるからである。
これは、昨今の言葉で言えば「クラウド型ソフトウエア」のことだ。当時はまだクラウドという表現が広く使われていなかったが、ベニオフはいち早くその考え方に基づいて企業を興したのである。
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