シリコンバレー最強CEOの偉大なる"妄想" 我慢ならない世の中を、変える方法

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社内組織にも変化を起こした。セールスフォースの製品の中心は、CRM(顧客管理ソフト)だが、それ以外にも社内で利用できるツイッターのような仕組みも開発した。そしてこれによって、社員がアイデアを交換し、情報を共有し、プロジェクトの進捗状況にアクセスするようになって、社内の硬直化した上下関係を溶解させるような影響を利用企業に与えているのだ。

ベニオフはこんなふうに語ったことがある。「上司が部下の手柄を横取りするようなことには、我慢がならない」。テクノロジーは正当な方法で利用されると、フェアな職場環境を生み出し、人々が進んで貢献したくなるような前向きな仕事場を作り出すのだ。

グーグルもまねした、“1/1/1ルール”

“シリコンバレー最後の大型CEO”とも呼ばれるベニオフの言動は、やや誇大妄想的でもある。だが、日常的なビジネスを超えたビジョンをつねに掲げて、目前のことにとらわれている人々に、進むべき方向性を指し示す。彼の場合は、資本主義社会においても、企業が社会的な目的を統合した存在になりうるということを証明してみせた。

ベニオフは、セールスフォース創設時から「1/1/1」ルールを設けてきた。これは、同社の利益、製品、社員の時間のそれぞれ1%を社会貢献のために費やすという取り決めだ。現金による寄付はもちろんのこと、優れた目的を持つNPOにセールスフォースのサービスを無料で提供したり、社員が就業時間の一部を使ってホームレスの生活をサポートするためのボランティア活動に出掛けたりする。

ベニオフは、シリコンバレーのソフトウエア業界でたんまりと経験を積んだ後、フィランソロピーの道へ進むか、それとも起業すべきかで頭を悩ませたという。これまでその2つは別々の道と考えられていて、どちらか一方を選ぶことが必須だった。ところが、1/1/1ルールによって、その2つが統合可能なものだと思いつく。

このルールによると、企業は儲けを出せば出すほど、そして大企業に育って社員を多く抱えるほど、社会へのインパクトを増すことができるのだ。ただ寄付金を送っておしまいという従来の企業フィランソロピーの型どおりのやりかたではなく、もっとビジネスや社員のマインドの中にまで入り込んで、2つの異なった世界を統合させることができる。その点で、このルールは画期的なアイデアともいえる。実はグーグルもこのルールをまねているほどだ。

ベニオフは、10代の頃にはすでに自分のソフトウエア会社を興していたほどのテクノロジー通だ。アップルを経て、企業向けソフトウエア開発会社大手のオラクルでは副社長にまで上り詰め、シリコンバレーの若手の注目株となった。そしてその後、セールスフォースを共同創設。

音楽が大好きで、ダライ・ラマを信奉し、クリントン元大統領とも親好が深いという、全方向に心が開いたマルチタレント。そして、時には冒頭のように競合企業をこき下ろすのだが、その表現はユーモラスで、シリコンバレーでは一種のエンターテインメントにもなっている。

クレージーで知的で社会を思うベニオフ。その人柄には、多くのファンがついている。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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